研究課題
本研究は、膵癌細胞間質制御による膵癌治療モデルの確立を目的としていました。これまで得られた結果を報告します。①膵癌の間質制御効果を持つと報告されている化学療法剤であるgemcitabineとnab-paclitaxel(GnP)をこれまで多く使用されているgemcitabine及びS-1(GS)を用いた化学療法と比較しました。その結果、GnPを用いて切除に至った膵癌症例はGS群に比べて、有意に腫瘍縮小効果及び 腫瘍マーカー(CA19-9)の減少効果を認め、GnPの明らかな抗腫瘍効果を認めました。②膵癌間質変化の検討で、GnP群はその他の群に比べて間質の未熟線維芽細胞(CAF)が有意に減少していました。さらに、GnP群に対して活性化膵星細胞のマーカーであるαSMAを用いた免疫染色検討で、化学療法を行っていない症例及びGS 療法を行った後に切除に至った症例に比べて、有意にCAFが減少していることが確かめられました。③膵癌間質におけるGnPのCAFへの影響を調べるため、GnP投与期間とαSMA抑制率との相関を調べました。その結果、GnPの投与期間が長いほどCAFが抑制されている結果が得られ、GnP投与期間とSMA抑制率の間には相関があることが明らかになりました(R係数 = 0.3095)。④膵癌間質に存在するリンパ球分布の検討において、GnP群 では、細胞障害性リンパ球のマーカーであるCD8が有意に増加しているのに対し、制御性リンパ球のマーカーであるCD163およびFoxP3が有意に低下していました。これらの結果より、膵癌間質のCAFを制御し間質を疎にすることで、間質への細胞障害性リンパ球を効率的に誘導し、さらに制御性リンパ球による腫瘍細胞障害が抑制されるという我々の仮説を強く支持する結果が得られました。以上より、本研究目的である間質制御による膵癌治療モデル確立が達成されました。
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