研究課題/領域番号 |
18K08702
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長井 和之 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (30567871)
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研究分担者 |
増井 俊彦 京都大学, 医学研究科, 講師 (20452352)
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
田畑 泰彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵液瘻 / 重症化 / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
膵臓手術後の周術期死亡の主たる原因は膵液の漏れによる膵液瘻の重症化であり、原因因子を明らかにすることは喫緊の課題である。しかしながら、そもそも漏れた膵液はどの様な状態になったらいわゆる臨床的に問題になるのか、特に死亡に直結する膵液瘻の重症化、多臓器不全を来たす因子はなにか、明確なメカニズムは明らかになっていない。今回、我々は脂肪酸に着目し、膵液瘻悪性化解明に向けた意義を検討した。 膵液瘻研究がこれまで十分に進んでいなかった原因の一つは、膵液瘻の動物実験モデルが構築されていなかったことがある。そこで、我々はラットを用いて膵切離を行ったところ、腹腔内の軽度のけん化はみとめられたものの全てのラットは生存し、体重減少や肝酵素上昇などを来すような重症膵液瘻を来すものはいなかった。我々が着目していた脂肪酸を投与して膵切離を行い、48時間後に擬死したところ、腹腔内のけん化とともに肝酵素上昇、腎糸球体の出血梗塞などを来たし、再現性をもった重症膵液瘻モデルを構築することに成功した。さらにその検討を進めるため、脂肪酸を膵液の構成する一部で脂肪分解酵素であるリパーゼとともに投与したところ、膵切離を伴わなくても同様の重症化が認められた。さらに実際の膵手術患者において腹腔内ドレン排液の脂肪酸濃度を検討したところ、明らかなに膵液瘻の重症化と相関が見られ、動物実験モデルで検討された膵液瘻のメカニズムが臨床現場における膵液瘻を反映している可能性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再現性のある膵液瘻のラットモデルを構築することができ、さらにそれを用いて脂肪酸と膵液の構成要素であるリパーゼとの関係を検討することができた。また、実臨床における膵液瘻患者の腹腔内脂肪酸濃度と膵液瘻の重症化が関係していることが明らかにすることができ、有効な治療法を開発できるモデルとして目処をつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
膵液瘻の本ラットモデルはあくまで脂肪酸を投与するという人工的なものであるため、今後まず腹腔内の自家脂肪を用いた膵液瘻重症化モデルを構築し、さらに臨床現場に近づいた動物モデルを構築する。さらに、脂肪酸分解に対する阻害薬を開発し、このモデルを用いて阻害薬による膵液瘻の防止あるいは重症化抑止効果があるかどうかの検証を行う。また、従来から唱えられている悪性化因子である感染との組み合わせがどの様に悪化に影響するのかを検討する。
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