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2020 年度 実施状況報告書

不飽和脂肪酸分解に着目した膵液瘻重症化因子解明と治療的応用

研究課題

研究課題/領域番号 18K08702
研究機関京都大学

研究代表者

長井 和之  京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (30567871)

研究分担者 増井 俊彦  京都大学, 医学研究科, 講師 (20452352)
上本 伸二  京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
田畑 泰彦  京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード膵液瘻 / ラットモデル / 不飽和脂肪酸
研究実績の概要

膵臓手術の合併症の一つである膵液瘻は生命にかかわる重篤な状態を引き起こすことが知られており、全国平均で30-65%を占め、膵臓手術の高い周術期死亡率の主な原因となっている。依然改善がみられない原因は、膵液瘻の悪性化のメカニズムが明らかとなっていないという点であり、これまで様々な研究が行われてきたが明らかな因果関係を示せた報告はない。本研究では急性膵炎のメカニズムの一つに脂肪酸が関与していることに着目し、膵液瘻は局所的な膵炎で進展するという仮説を立て、膵液瘻ラットモデルを確立すること、さらに、それを用いて不飽和脂肪酸が分解され、一価となった脂肪酸が膵液漏に関与することを検討する予定である。
前年度までに、ラット腹腔内に不飽和脂肪酸を投与することで膵切離モデルでの明らかな膵液瘻悪化が示され、分解酵素を阻害することで膵液瘻が改善することが示された。詳細に検討すると、膵液および一価脂肪酸にさらされた膵表面において膵腺房細胞の壊死、炎症細胞の浸潤が見られ、膵液瘻において局所性の脂肪阻害からの分解酵素逸脱、それによるさらなる脂肪分解によって膵腺房細胞の障害がすすむというメカニズムを強く示唆する結果が得られた。本年度は臨床検体において膵切除後のドレン排液の脂肪酸を測定したところ、不飽和脂肪酸と臨床的膵液瘻の頻度に相関が見られたことを含めて前年までの成果の論文化を行った。さらに、不飽和脂肪酸と膵液瘻の関係を実臨床においても強く示唆する結果が得られた。さらに臨床検体においてドレン排液におけるカルシウム濃度の低下と膵液瘻が相関することを見いだした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年までのデータをまとめた論文報告がなされており、研究としては順調に進展していると考える。一方、膵液瘻防止のための治療薬開発については、治療薬の形状の開発に時間を有しており、適切なdrug deliberyを来す濃度、素材構成を現在検討中で有ることから、予定よりは遅れているものの、ある程度の目処は立ちつつある。さらに、臨床検体を用いた、脂肪酸分解を論拠にした簡便な膵液瘻検出の開発を進めており、当初予定より進んでいる部分もある。総合して、全体としては一部遅れているところがあり、やや遅れている状況である。

今後の研究の推進方策

昨年度に検討したドレン臨床検体において、リパーゼ分解後の不飽和脂肪酸の細胞障害効果に対するカルシウムのキレート効果の可能性を示唆する結果が得られた。今後ドレン中のCaと脂肪酸の関係、さらに膵液瘻の簡便な検出方法としての有用性を検討する。さらに、現在進めている膵液瘻防止のための治療薬の開発を素材を改良して進め、本年度に開発の目処を付ける予定である。

次年度使用額が生じた理由

膵液瘻防止のためのラットモデルでの素材開発において、ラットモデルの使用が緊急事態宣言等の影響で制限され、十分な実験が行えず、やむを得ず次年度に繰り越し、使用することとした。また、臨床検体を用いたドレン排液解析では、簡便な測定を目指して実臨床における測定を行ったことで、費用の負担は少なく、次年度に費用を繰り越すことができた。
この一年でラットモデルを使用する体制が整えることができたため、次年度では膵液瘻防止素材の開発においてラットを用いた実際の膵液瘻を模したモデルでの性能評価を行う。膵液瘻モデルでおかれるコントロールラット(シャムオペ)の数も勘案してラット費用として100万円を計上し、さらに、阻害薬開発における論文化による公表、さらにCaを用いた簡便な膵液瘻解析の論文公表化にかかる費用を59万円と見積もり、使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] Impact of vascular abnormality on contrast-enhanced CT and high C-reactive protein levels on postoperative pancreatic hemorrhage after pancreaticoduodenectomy: A multi-institutional, retrospective analysis of 590 consecutive cases2021

    • 著者名/発表者名
      Yuichiro Uchida, Toshihiko Masui, Kazuki Hashida, Takafumi Machimoto, Kenzo Nakano, Akitada Yogo, Asahi Sato, Kazuyuki Nagai, Takayuki Anazawa, Kyoichi Takaori, Shinji Uemoto
    • 雑誌名

      Pancreatology

      巻: 21 ページ: 263-268

    • DOI

      10.1016/j.pan.2020.11.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Postoperative pancreatic fistulas decrease the survival of pancreatic cancer patients treated with surgery after neoadjuvant chemoradiotherapy: A retrospective analysis2020

    • 著者名/発表者名
      Uchida Yuichiro、Masui Toshihiko、Nagai Kazuyuki、Anazawa Takayuki、Yoshimura Michio、Uza Norimitsu、Takaori Kyoichi、Mizowaki Takashi、Uemoto Shinji
    • 雑誌名

      Surgical Oncology

      巻: 35 ページ: 527~532

    • DOI

      10.1016/j.suronc.2020.10.010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Combination of postoperative C-reactive protein value and computed tomography imaging can predict severe pancreatic fistula after pancreatoduodenectomy2020

    • 著者名/発表者名
      Uchida Yuichiro、Masui Toshihiko、Nakano Kenzo、Yogo Akitada、Yoh Tomoaki、Nagai Kazuyuki、Anazawa Takayuki、Takaori Kyoichi、Uemoto Shinji
    • 雑誌名

      HPB

      巻: 22 ページ: 282~288

    • DOI

      10.1016/j.hpb.2019.06.020

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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