研究課題/領域番号 |
18K08703
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 省吾 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30452436)
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研究分担者 |
和田 浩志 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 消化器外科 副部長 (00572554)
木下 満 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00792813)
後藤 邦仁 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10362716)
中塚 伸一 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 病理・細胞診断科主任部長 (90303940)
江口 英利 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90542118)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胆道癌 / 術前治療 / 治療抵抗因子 |
研究実績の概要 |
胆道癌は、膵癌に次ぐ罹患率と死亡率である上、治療法はほとんど開発されておらず、切除可能であっても局所進展例では極めて治療成績が悪い。これまでのわれわれの研究から、胆道癌において、局所進展のメカニズムが、治療効果に影響している可能性がでてきた。本研究では、胆道癌における進展メカニズムと治療抵抗性の関連を明らかにし、良好な局所制御能をもつ術前治療の開発をめざす。胆道癌切除検体を用いて、これまでわれわれが同定した治療抵抗・癌進展因子の発現を検討し、進展メカニズムを明らかにする。さらに、これまでの研究結果をもとに開発している新規術前治療法の進展メカニズムへの影響を、統合的に検証する予定である。本年度の研究では、胆道癌に対する術前化学放射線療法27例、症例背景を合わせた術前治療なし症例79例、術前化学療法を施行した症例11例を集積した。術前化学放射線療法例と術前治療なし症例の症例背景を比較し、術前画像を含めた術前診断情報を因子とした多変量解析にて、術前化学放射線療法が予後に寄与することを明らかにした。さらに、切除検体を用いた検討を行った。これまでのわれわれの研究では、治療抵抗因子(化学療法抵抗マーカー)として、癌幹細胞系としてDNA修復機構のFanconi経路を、上皮間葉転換系としてIL6/TGFbに誘導されるSmad経路を、癌間質マーカーとしてSPARCを示してきた。複数の経路と因子を検討した結果、Smad4は癌先進部において癌中心部より発現が上昇していること、その上昇は化学放射線療法により低下することが明らかとなった。本年度の研究結果の意義は、癌の進展により治療抵抗因子の発現が異なることが明らかになったことで、効果的な術前治療を開発するための目標が示されたことであり、さらに検討を進めることによって、腫瘍の局所進展メカニズムを効率的に制御可能な治療の開発が行えると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、胆道癌において、腫瘍の局所進展のメカニズムと治療抵抗性の関連を明らかにし、良好な局所制御能をもつ術前治療の開発をめざすことである。本年度の成果は、術前化学放射線療法症例、術前治療なし症例、術前化学療法症例を順調に集積できたことと、これまで教室で検討してきた治療抵抗経路(因子、マーカー)を切除検体で検討し、癌の進展とともに発現する分子を同定して、かつ、それが術前化学放射線療法によって制御可能であることを示したこととである。今後は、術前化学療法症例における検討や、結果に基づくあらたな術前治療の開発、その分子生物学的メカニズムの解析などを進めていく予定であり、進捗状況として、順調であると考えている。今後想定される治療開発の遅れの原因の一つは、症例集積の遅れや、術前化学療法の開発の遅れや、その他さまざまな問題に伴う中止が考えられる。この場合、既存切除標本や癌細胞をもちいた化学療法抵抗性誘導性実験や放射線治療抵抗性誘導実験に研究をシフトして、臨床治療の開発が可能な段階まで、候補となる治療の開発研究を行う予定である。予期せぬ事象により研究がストップした場合においても、この方法で対応が可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、胆道癌において、腫瘍の局所進展のメカニズムと治療抵抗性の関連を明らかにし、良好な局所制御能をもつ術前治療の開発をめざすことである。本年度の成果から、癌先進部における治療効果判定因子があきらかとなった。今後は、さらに症例を蓄積しつつ、さらに治療抵抗因子の発現解析を行うともに、術前化学療法施行例や、あらたに開発した術前化学療法施行例における効果の検討を進める。化学療法と放射線化学療法に差異が認められた場合、細胞実験に還元して、放射線療法の治療効果を補完する方法の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究で本年度に行うはずであった研究作業が次年度にも行うため、助成金を次年度使用額とした
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