研究課題
胆道癌は、膵癌に次ぐ罹患率と死亡率である上、切除可能であっても局所進展例では極めて治療成績が悪い。これまでのわれわれの研究から、胆道癌において、局所進展のメカニズムが、治療効果に影響している可能性がでてきた。本研究では、胆道癌における進展メカニズムと治療抵抗性の関連を探ることを目的とした。胆道癌に対する術前化学放射線療法27例、術前治療なし症例79例、術前化学療法11例を集積し、臨床病理学的検討で、術前化学放射線療法が予後に寄与することが示された。これまでのわれわれの研究では、治療抵抗因子として、癌幹細胞系としてDNA修復機構のFanconi経路を、上皮間葉転換系としてIL6/TGFbに誘導されるSmad経路を、癌間質マーカーとしてSPARCを示してきた。以上の分子を切除検体で検討したところ、Smad4は癌先進部において発現が亢進し、化学放射線療法により低下することが明らかとなった。癌幹細胞系としてのFanconi経路の癌浸潤部位、中心部における亢進の差異は明らかでなく、癌間質マーカーとしてのSPARCにおいては、癌先進部の間質におけるSPARCの発現は予後、術後補助療法の効果に関係し、やはり化学放射線療法により低下することが明らかとなった。さらに、腫瘍進展メカニズムにかかわる新たな因子を探るために、腫瘍浸潤モデルを利用した高浸潤細胞株を作成した。浸潤癌細胞と繊維芽細胞を共培養すると線維芽細胞におけるSPARCの発現は上昇した。さらにSPARC蛋白を癌細胞に添加した場合、癌細胞の増殖能が亢進した。以上から、癌先進部においては、Smad4の発現が亢進し、間質SPARCが亢進すること、間質のSPARCの亢進によって、癌増殖が亢進する可能性があることが示唆された。今後、細胞培養系において、化学療法感受性、放射線感受性について検討する予定である。
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