研究課題/領域番号 |
18K08706
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小林 剛 広島大学, 医系科学研究科(医), 特任講師 (50528007)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 循環腫瘍細胞 / 肝細胞癌 / 免疫逃避機構 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝細胞癌HCCに特異的な循環腫瘍細胞CTCの一細胞解析から、CTCが獲得する形質を探索し、CTCの免疫逃避解除法を開発することである。 HCC切除132例(2015-2018年)の検討から、GPC3-CTC、AFP、DCP、多発腫瘍が術後再発の独立危険因子であることを明らかにした。並行してGPC3-CTCのフェノタイプ解析(PD-L1、CD47)を行っている。 HCC切除255例(2010-2015年)の血液DNAからマクロファージ免疫チェックポイント分子SIRPαIgVドメインヴァリアントを評価した。V1ヴァリアントはV2およびV1/V2ヴァリアントに比較して、再発率は同等であったが、有意に生存率が不良であった(p=0.007)。CD47-SIRPαのアフィニティがHCCの予後に影響する可能性がある。 HCC切除321例(2010-2015年)におけるT細胞免疫チェックポイント分子PD-1の遺伝子多型PD-1.1について解析、PD-1高発現型のGGアレルは有意に肝外再発率が高率で(p=0.036)、全生存率が不良であった(p=0.009)。PD-1発現の多寡がHCCの予後に関わる可能性がある。 HCC門脈浸潤3例の腫瘍部、非腫瘍部、門脈浸潤部からRNAを採取し、次世代シークエンサーによる網羅的RNAシークエンスを行っている。門脈浸潤に関わる遺伝子を探索し、単離CTCにおけるシークエンスにつなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCC切除症例におけるCTCの検出およびフェノタイプ解析を継続的に行い、臨床データを蓄積している。CTC上のCD47およびPD-L1発現制御に関わる遺伝子解析を行う予定である。 SIRPαおよびPD-1の遺伝子多型解析は解析が終了し、PD-1遺伝子多型に関して論文報告した(Int J Surg in press)。
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今後の研究の推進方策 |
CTCにおけるCD47発現制御機構の解析:癌部とCTC上のCD47発現の乖離した症例の癌部とCTCからDNAを増幅し、DNAマイクロアレイによりCD47発現を制御する分子機構を探索する。得られた分子はqRT-PCRにより検証し、機能解析する。 肝癌個別化モデルによる免疫逃避解析:患者血液及び切除肝灌流液からマクロファージを単離する。CTCと共培養することによる貪食能及び抗原提示能の評価、およびCTCのプロファイルとSIRPαヴァリアントのデータと合わせて臨床病理学的に解析する。 GPC-CTCにおける遺伝子プロファイル解析:HCC門脈浸潤例のRNAシークエンス結果からHCC門脈浸潤に関わる遺伝子を探索し、単離CTCにおけるシークエンスにつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
CTC検出用の抗体試薬購入予定であったが、新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴って、試薬の納入状況が不安定であったため、次年度購入予定とした。
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