研究課題/領域番号 |
18K08708
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (70586859)
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研究分担者 |
寅田 信博 九州大学, 大学病院, 臨床検査技師 (00398075)
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 講師 (20452708)
鬼丸 学 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80529876)
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / 細胞死 / necroptosis / 微小環境 / 膵癌オルガノイド |
研究実績の概要 |
本研究では癌組織で恒常的に起こっている細胞死形態、あるいは治療によって誘導される 細胞死形態が癌浸潤機構に与える役割について明らかにすることを目的とする。 実際に癌組織内で細胞死がどのような役割を担っているのかを解明するために、ヒト膵癌組織、自然発癌マウスモデル(KPCマウス)からprimarycultureで樹立した癌細胞や膵癌細胞株を用いて、2次元培養や3次元コラーゲン培養、3次元オルガノイドなど各種培養条件下で起こる細胞死形態について死細胞染色などを用いて検討する。まず、ヒト膵癌切除標本を用いた免疫染色において、膵癌細胞においてnecroptosisの実行に必要なRIP3やMLKLが発現していることを確認した。また、複数のヒト膵癌細胞株、KPCマウス由来の膵癌細胞を用いた実験で、RIP3とMLKLを同時に高発現している膵癌細胞においてのみ薬剤によるnecroptosisの誘導が可能であることが分かった。また、ヒトの膵癌細胞におけるnecroptosis関連タンパクの発現解析によってnecroptosisを起こした膵癌細胞の上清内において、特異的にMacrophage Inflammatory Protein-3(MIP3A)やC-X-C motif chemokine 5(CXCL5)の発現が上昇していることが分かり、CXCL5のレセプターであるC-X-C chemokine receptor type 2(CXCR2)を阻害薬SB225002で阻害するとnecroptosisの上清によって亢進していた膵癌細胞の遊走・浸潤能に対して阻害効果が見られた。これらの結果から、浸潤部の膵癌細胞におけるnecroptosisは、CXCL5-CXCR2経路を介して膵癌細胞の遊走、浸潤能を増強していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
膵癌細胞におけるnecroptosisの遊走、浸潤能に与える影響およびそのシグナル経路を明らかにし、原著論文を含む複数の発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、necroptosisの今回判明した経路以外の微小環境に与える影響や、膵癌におけるnecroptosisの制御についての解明を進め、実臨床での治療戦略につなげることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は研究用試薬、器材、NGSシークエンス解析費用等に使用予定である。
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