研究課題/領域番号 |
18K08709
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
増田 稔郎 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (50551256)
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研究分担者 |
山下 洋市 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00404070)
岡部 弘尚 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (40573621)
今井 克憲 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60555746)
中川 茂樹 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (10594872)
日比 泰造 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (10338072)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肝内胆管癌 / CXCL12 / cDNAマイクロアレイ / 転移 / vivo / 予後不良 |
研究実績の概要 |
肝内胆管癌 (Intrahepatic cholangiocarcinoma: ICC)は、原発性肝癌の約5~10%を占める癌であり、根治的切除後も高率に再発をきたす予後不良な癌である。再発の半数以上は肝転移であることから、肝転移を含めた転移をいかにコントロールするかはICCの予後改善の喫緊の課題である。本研究は、ICCにおける転移・再発のメカニズムについて基礎的な研究を行い、ICCの新規治療ターゲットを見出すことを目的とした。 これまでの当該研究の報告として、凍結切除標本症例の原発巣及び転移巣(肝)のペア(n=3)をcDNAマイクロアレイに提出し、原発巣に比べ肝転移巣で高発現及び低発現する複数の遺伝子群を同定した。次に遺伝子群からFold-changeの値を参考にして4つの遺伝子を抽出した。これらの遺伝子を原発巣及び転移巣(肝)のペアのホルマリン固定パラフィン包埋切片(原発巣30例、転移巣36例(一症例で複数の転移巣があるものを含む))による免疫組織化学染色を用いて評価した結果、CXCL12のみが原発巣に比べ肝転移巣で有意に高発現していた。in vitroにおいて、siRNAを用いてヒト胆管癌細胞株(SSP25, HuH28)のCXCL12抑制により、有意に浸潤能及び遊走能を抑制した。 本年度は、さらにhumanでのエビデンスを蓄積するために、原発巣のみ127例を用いてCXCL12の発現を評価した。臨床病理学的所見では、CXCL12高発現症例では有意にCA19-9が高く、有意に血管侵襲やリンパ節転移の頻度が高かった。長期予後に関しては、CXCL12高発現症例では有意に予後不良(無再発生存率:Log-rank P<0.0001、全生存期間:Log-rank P=0.0004)であり、肝転移も有意に増える(低発現症例:24.6%、高発現症例:53%, P=0.0012)ことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、in vitroにおいて、CXCL12抑制によるヒト胆管癌株(SSP-25, HuH-28)の浸潤能及び遊走能の抑制を確認した。今年度は、さらにhumanでのエビデンスを蓄積するために、原発巣のCXCL12の発現と臨床病理学的因子、長期予後、肝転移との関連について評価を行うこととした。併せて従来の計画通り、動物実験を行う準備も並行して進めることとした。 ICC原発巣127例で免疫組織化学染色によるCXCL12の発現を評価した。CXCL12の発現程度をscore化した後、median値で2群に分けた。高発現症例は66例であった。臨床病理学的所見では、CXCL12高発現症例では有意にCA19-9が高く、有意に血管侵襲やリンパ節転移の頻度が高かった。長期予後に関しては、CXCL12高発現症例では有意に予後不良(無再発生存率:Log-rank P<0.0001、全生存期間:Log-rank P=0.0004)であり、肝転移も有意に増える(低発現症例:24.6%、高発現症例:53%, P=0.0012)ことがわかった。以上のことから、原発巣におけるCXCL12高発現症例は侵襲性が高く、肝転移をより高頻度に伴い、予後不良であることがわかった。 動物実験においては、CXCL12のヒトshRNAを組み込んだレンチウイルス粒子をSSP-25及びHuH-28にtransfectionし、CXCL12を低発現するICC安定株を作成している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
CXCL12を抑制したICC細胞株の生体内の動向を、免疫不全マウスを用いて検証する。具体的には、CXCL12のヒトshRNAを組み込んだレンチウイルス粒子をSSP-25及びHuH-28にtransfectionし、CXCL12を低発現するICC安定株を作成する。作成した安定株を、免疫不全マウスの脾臓に直接投与する肝転移モデルを用いて、細胞株接種後4~6週後の肝におけるICC株の転移巣形成能をcontrolと比較し評価する。これらの研究により、生体内におけるCXCL12と転移巣形成能及び臓器特異的転移形成能との関連を評価する。得られた結果を踏まえ、CXCL12の受容体であるCXCR4あるいはCXCR7の阻害剤投与により、in vitroにおいてCXCR4/CXCR7-CXCL12相互作用の抑制による転移抑制効果を検証する。 また、ヒト切除肝標本を用いてCXCL12の受容体であるCXCR4及びCXCR7の免疫組織化学染色も行い、CXCL12発現との相関を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。試薬、消耗品の購入及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。また、最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
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