研究課題/領域番号 |
18K08712
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
門馬 智之 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20622335)
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研究分担者 |
齋藤 元伸 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (90611749)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腸癌 / SLC37A1 / 抗癌剤耐性 |
研究実績の概要 |
SLCファミリーは細胞膜に存在するトランスポーターであり、近年癌などの悪性腫瘍においてその悪性化に関与する働きがあることが注目されている。細胞膜に存在するもう一つのトランスポーターであるABCファミリーは研究がすすんでおり、とくにMDR1遺伝子は種々の癌で発現が亢進しており、抗癌剤耐性に関与することが知られている。そのため本研究では、SLCファミリー特に、SLC37A1の抗癌剤の耐性をもたらす機序の解明と癌における発現を検討し、さらに、耐性克服をふまえた治療標的としての有用性についても検討する。具体的には ①大腸癌切除検体でのSLC37A1の発現を確認し、臨床病理学的因子との関連解析をおこなう なかでバイオマーカーとしての有用性を検討する。 ②大腸癌細胞株を用いてSLC37A1の機能解析、特に細胞増殖や浸潤能といった癌の発生・進展に関与する機能の検討を行う。 ③薬剤耐性を乗り越える治療標的としての可能性を探求する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SLC37A1発現を大腸癌切除検体にて検討し、非癌部に比べて癌部で発現が上昇していることを見いだし、大腸癌での発現亢進例は予後が不良であることを見いだした。大腸癌切除検体におけるSLC37A1の発現を免疫染色法にて評価するために抗SLC37A1 抗体を購入し、発現解析に使用できるかどうかの予備的検討をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
SLC37A1の大腸癌における発現をFFPE切片を用いた免疫染色にて検討し、リンパ侵襲・脈管侵襲・遠隔転移といった臨床病理学的因子との相関を検討する。抗体の特異性・再現性が確認され次第、多数例での検討をおこなう。また、SLC37A1 発現と予後との相関も検討する。また、SLC37A1の大腸癌での機能は不明なため、大腸癌細胞株を用いての機能解析実験をおこなう。細胞株にてSLC37A1の強制発現ないし抑制をおこない、SLC37A1の発現変動によりもたらされる細胞増殖能や浸潤能の変化、細胞形態の変化をMTTアッセイやコロニーフォーメーションアッセイ等をもちいて観察し、SLC37A1の癌細胞に対する影響を検討する。さらに、SLC37A1が直接関与する因子の同定をもたらす多層的解析の準備を進める。SLC37A1を強制発現ないし抑制した細胞株を用いてマイクロアレイ等による遺伝子発現解析、マイクロRNA解析、メチル化解析等をおこなう。これにより、SLC37A1発現変動に伴う分子生物学的変動を全体的にとらえることができ、その意義を明らかにすることができる。mRNAはエンリッチメント解析(DAVIDやGSEA解析)を用いる予定であるが、アレイ実験同様に外部委託するなど資源と時間の有効活用を心がけることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き手術検体組織と臨床病理学的因子の収集をおこない、さらに、抗SLC37A1抗体を用いての免疫染色の基礎的検討をおこなっていたために、使用額が少なかった。当初の予定通り物品費の多くはmRNA、免疫染色用の備品の購入に用いられる予定である。また、情報収集や解析結果を学会発表する費用や論文として公表する費用に充てられる。
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