研究課題/領域番号 |
18K08716
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
飯沼 久恵 帝京大学, 医学部, 講師 (30147102)
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研究分担者 |
橋口 陽二郎 帝京大学, 医学部, 教授 (60251253)
端山 軍 帝京大学, 医学部, 助教 (80533744)
松田 圭二 帝京大学, 医学部, 准教授 (90302728)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MSI / 大腸癌 / 免疫チェックポイント / PD-L1 / PD-L2 |
研究実績の概要 |
近年、免疫チェックポイント阻害剤の適応疾患が拡大し、2018年12月には抗PD-1抗体薬ペンブロリズマブが、「癌化学療法後に憎悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌」に対して適応追加の承認を得た。これは、癌種横断的なMSI-High固形癌を対象としたものである。これまでの研究から、大腸癌はMSI-Highな疾患として知られており、今後大腸癌におけるこれらの薬剤の臨床での使用が期待されている。今回我々は、これまで当科の約450例の大腸癌症例の腫瘍組織と正常組織からDNAを抽出し、シークエンサーで5領域のMSIのマーカー(D10S197, D11S904, D13S175, D2S123およびD5S107)を解析し、MSI-High、MSI-Low、MSSを判定した。その結果、約8%にMSI-Highを確認することができた。病理因子との検討では、NSI-High症例は有意に右側が多く、リンパ節転移が有意に少なかった。5年生存期間の検討では、MSSが72%に対して、MSI-Highが90%と、MSI-High症例が良好な傾向を示した。大腸がん組織の免疫チェックポイント関連分子であるPD-L1とPD-L2の発現を免疫組織染色で検討した。その結果、PD-L1およびPD-L2の高発現群は低発現群に比べて予後不良であった。このように、大腸癌症例においてMSI-Highは約8%に認められ。ペンブロリズマブの登場により、予後不良なMSIを呈する進行・再発大腸癌への治療成績の向上が期待される。今後大腸癌での、PD-L1およびPD-L2分子の発現とMSIとの関連性を、より詳細に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は、我々が保存した約400例の腫瘍組織のMSIを測定し、MSI-H、MSI-L、MSSを判定することであった。DNAシークエンサーで5領域のMSIのマーカー(D10S197, D11S904, D13S175, D2S123およびD5S107)を解析し、MSI-High、MSI-Low、MSSを判定した結果、約6%にMSI-Highを確認することができた。さらに、大腸癌組織のPD-L1とPD-L2発現を、免疫組織染色で検討した。現在、大腸癌組織のCTLおよびマクロファージの免疫染色をおこない、その数と局在の検討も進めている。このように、2018年度の目的はほぼ達成している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は症例数を重ねて、MSI陽性例とMSI陰性例の腫瘍組織のPD-L1とPD-L2発現の違い、さらに浸潤CTLおよびマクロファージの局在の違いを明らかにする。さらに、MSI大腸癌組織とペアの血漿サンプルから超遠心法(100000g 70min 2回)でエクソソームを分離し、microRNAのプロファイリングをmicroRNAアレイで明らかにする予定である。すでに血漿サンプルからのエクソソームの分離も開始している。また、エクソソームの形態像を電子顕微鏡で、表面マーカーをFACSで解析し、エクソソームが高純度に分離できていることを確認している。このように、今年度の研究も順調にスタートしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
近年MSIのコンパニオン診断薬として販売された、「MSI検査キット(FALCO)」は、従来の同等品に比べて、腫瘍組織だけで判定が可能であり、そのため当初の予定よりキット代金を減額することができた。これらの研究費は、今後の免疫チェックポイント関連分子の解析などに使用する予定である。
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