研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤の適応疾患は拡大を続け、2018年12月には抗PD-1抗体薬ペンブロリズマブが、「癌化学療法後に憎悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌」に対して適応追加の承認を得た。これは、癌種横断的なMSI-High固形癌を対象としたものである。さらには、2020年にはオブジーボが高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する大腸癌について追加保険収載されている。今回我々は、これまで当科の約450例の大腸癌症例の腫瘍組織と正常組織からDNAを抽出し、シークエンサーで5領域のMSIのマーカー(D10S197, D11S904, D13S175, D2S123およびD5S107)を解析し、MSI-High、MSI-Low、MSSを判定した。その結果、約8%にMSI-Highを確認することができた。病理因子との検討では、NSI-High症例は有意に右側が多く、リンパ節転移が有意に少なかった。5年生存期間の検討では、MSSが72%に対して、MSI-Highが90%と、MSI-High症例が良好な傾向を示した。大腸がん組織の免疫チェックポイント関連分子であるPD-L1とPD-L2の発現を免疫組織染色で検討した。その結果、PD-L1およびPD-L2の高発現群は低発現群に比べて予後不良であった。このように、大腸癌症例においてMSI-Highは約8%に認められ、ペンブロリズマブの登場により、予後不良なMSIを呈する進行・再発大腸癌への治療成績の向上が期待される。大腸癌に対するオブジーボの保険収載によって今後ますます大腸癌での、PD-L1およびPD-L2分子の発現とMSIとの関連性を検討することは重要と考えられる。大腸癌におけるバイオマーカーの探索を進めてきており、今年度は直接的に免疫チェックポイント阻害薬と関連してくる項目について、より詳細に検討する予定であったが、主任研究者が健康を害し、死亡するという不幸に見舞われたため、研究の中止を余儀なくされた。
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