研究課題/領域番号 |
18K08717
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 特任准教授 (40510235)
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研究分担者 |
鈴木 康弘 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (60332277)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腫瘍微小環境 / 腫瘍免疫 / 消化器癌 |
研究実績の概要 |
本計画の研究は、腫瘍細胞の増殖、転移の鍵を握る微小循環系(血管、リンパ管)を含む腫瘍微小環境の変化の過程を、腫瘍モデルマウス、ヒト病理検体を用いて追跡し、形態と機能の両側面から解析することにより、その腫瘍の特徴を理解するとともに、腫瘍内に正常な微小環境(血管、リンパ管の正常化)を再構築させ、「腫瘍微小環境のリプログラミング」を起こす事で、腫瘍の増殖を制御するための新しい抗脈管療法や、免疫療法を含めたより効果的なコンビネーション療法、そして発癌の予防薬の開発への応用を目指す。血管新生因子であるVasohibin2をノックダウンした腫瘍細胞を使用し、以下に示す研究成果を得た。腫瘍細胞をマウスの皮下に移植したモデルマウスに、免疫チェックポイント阻害剤を投与したところ、腫瘍の抑制は見られなかったが、微小環境の正常化が見られた。この標本を用いてさらに微小環境を解析したところ、CD8陽性のリンパ球の腫瘍内の浸潤がられたり、マクロファージの変化などの免疫環境の改善や、qPCRによるIL6などの慢性炎症因子の軽減などもみられ、今後新たな腫瘍細胞の作成やモデルマウス作成をはじめ、これらのマウスを用いた実験の必要性が確認できた。現在コロナ禍であり、共同研究先への移動がスムーズにいかず、モデルマウスのやりとりも遅れているため、かなり研究が遅れており、本研究計画は延長を申請する次第に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍プラス大学校舎の引っ越しがかさなり、動物実験が大幅に遅れたため、研究計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍血管正常化を通じた微小環境正常化は、生体内に何をもたらすのか、宿主免疫力は回復するのか?を中心に今後は進めていく方針である。腫瘍血管は、形態的な異常をはじめ、血流の不均一や透過性の異常など、正常組織の血管とは形態と機能が大きく異なる。そのため、腫瘍内に低酸素状態を引き起こし、腫瘍優位な環境を作る事が知られている。化学療法においても、投与した薬剤が腫瘍の隅々まで行き渡らず、また、放射線療法も、その低酸素状態のために効果が不十分であるなど、腫瘍細胞を完全に根絶することは難しい。1993年より開発の始まった腫瘍血管内皮細胞をターゲットにした分子標的治療薬についても、「腫瘍血管を完全に破綻させる事は、完全な抗腫瘍には繋がらない」と報告されている。以降さらに、Rakesh Jain博士らによって、腫瘍血管は破綻させるのではなく、正常血管に近づけることで、ドラッグデリバリーシステムの改善などが得られ、抗腫瘍効果が得られるという腫瘍血管正常化という考えが提唱された。その後、この正常化が生体に様々なベネフィットを生み出すことがわかっており、本研究のモデルにおいても、血管と免疫細胞のインタラクション、そしてそれをどのように免疫チェックポイント阻害剤と併用していくかに注目をおいて進めていくことが望ましいと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍と大学校舎引っ越しにより、動物実験が遅れたため。
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