研究実績の概要 |
先行研究にて、切除不能・進行再発胃癌症例にラムシルマブ+パクリタキセル併用療法施行後早期に、血中VEGF-A値は全例で著明に上昇し高値群の予後は有意に不良であった。VEGF-Aは宿主由来であることから、本研究の目的は、①投与後早期のVEGF-Aと相関するSNPを同定する、②探索的に予後と相関するSNPを同定し、本併用療法のバイオマーカーを同定することである。 同意得られた42例を対象とした。投与早期に血中VEGF-A中央値は、11.5 pg/mlから304.7 pg/mlに有意に上昇し(p<0.001)、高値群(≧456pg/ml)の予後は有意に不良であり、先行研究の結果を再現した:mPFS 5.5 vs 1.8 months HR3.06(1.44-6.48), p=0.004, mOS 13.0 vs 6.0 months, HR2.74(1.06-7.07), p=0. 037。投与後早期の血中VEGF-Aと相関するSNPsとして、VEGFR2 rs10013228 A>G (p=0.055), rs11133360 T>C (0.017), rs2071559 A>G(p=0.072)が挙げられたが、いずれも予後との相関は認めなかった。多変量解析施行後、予後との相関が期待されるSNPsはVEGFR1rs9582036 A>C、PFS: HR2.23(0.94-5.31), p=0.070, OS: 3.10(1.12-8.62), p=0.030、VEGFR2rs2305948 C>T、PFS: HR2.11(0.88-5.04), p=0.093であった。 以上より、①ラムシルマブ投与後早期のVEGF-A高値は、予後不良のサロゲートマーカーであり、②VEGFR1rs9582036 A>CとVEGFR2rs2305948 C>Tは、本併用療法の新たなバイオマーカーとなる可能性がある。これらの結果を踏まえ、抗VEGF-A抗体/抗VEGFR2抗体併用によるVEGF-A/VEGFR2経路の二重阻害療法は有望であると考えられ、現在、医師主導治験の準備を行っている。
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