研究課題/領域番号 |
18K08726
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
土井 潔 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40305579)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 開心術 / 心拍応答 / 交感神経活性 |
研究実績の概要 |
僧帽弁形成術後の患者において1回心拍出量が増加しているにもかかわらず運動耐用能が必ずしも改善しないことが多い理由の一つとして、運動負荷により心拍数が増加する反応(心拍応答)が術後に低下していることがあげられる。心拍応答に関与する因子の一つに交感神経活性があるが、開心術後の交感神経活性について検討した研究はほとんど無い。 本研究では僧帽弁形成術後の患者を対象とし、術前後の心配運動負荷試験のデータから心拍応答を評価する。また術前後の患者における交感神経活性の評価として1)123I-MIBI心筋シンチグラフィー、2)心拍変動解析、3)骨格筋支配交感神経活性、4)血中カテコラミン量測定を行う。 MSNAの測定システムを当大学でも構築したが、安定したデータ収集ができていない。腓骨神経へのプローブ刺入はかなりの刺激を伴うため、実際の患者でデータを取ることはかなり難しいのが現状である。心拍変動解析に関しては安静時の解析ではデータのばらつきが大きかったため、起立負荷をかけることによって比較的ばらつきが少なくなることを判明した。現在までに開心術後の患者30名を対象にデータを収集しており近く学会にて発表する予定である。開心術後の心拍応答に関しては、第74回胸部外科学会および第51回心臓血管外科学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では僧帽弁形成術後の患者を対象とし、術前後の心配運動負荷試験のデータから心拍応答を評価する。また術前後の患者における交感神経活性の評価として1)123I-MIBI心筋シンチグラフィー、2)心拍変動解析、3)骨格筋支配交感神経活性、4)血中カテコラミン量測定を行う。 開心術後の心拍応答に関しては、開心術後の患者およそ24名の術前から術後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月まで継時的に心肺運動負荷試験を行って解析を行った。いわゆる胸骨正中切開を用いた患者と右開胸小切開(MICS)アプローチを用いた患者で比較すると、MICS群では心肺運動負荷試験の代表的な指標である最大酸素摂取量の回復が有意に早くなっていた。心拍応答に関しては両群の間に回復の差は無かった。MICS群で回復が早かった理由は、MICS群では手術に伴う筋力低下の度合いが少なかったことによると考えられた。MICSのメリットが美容以外にあることを客観的なデータで証明し、第74回胸部外科学会にて報告した。近く論文化を予定している。MSNAに関しては、測定システムを当大学でも構築したが安定したデータ収集ができていない。腓骨神経へのプローブ刺入の手技的な問題に加えて、検査室(脳波検査室)の電磁波遮断能力の問題が考えられており、これらの技術的問題の解決を行っている。心拍変動解析に関しては安静時のデータではばらつきが多かったが、起立負荷をかけることによってデータが安定することがわかった。現在はその条件下で開心術後の患者のデータを30名ほど収集しておりその解析結果を学会で近く発表の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
開心術後の心拍応答に関する術前から12ヶ月に及ぶ経過についての報告例はほとんど無い。第74回胸部外科学会および第51回心臓血管外科学会の報告結果の英語論文化を計画している。また心房細動に対するメイズ手術後の患者の心拍応答に関する研究も行われていないため、現在データを収集中である。先に述べたごとく心拍変動解析においては起立負荷を加えて収集したデータを基にした解析結果を近く発表予定である。MSNAに関しては当施設の生理学教室の協力を得て再度取り組む予定である。 心臓自律神経研究に関しては、最近注目されている経皮的耳介迷走神経刺激法という非侵襲的で新しい副交感神経の選択的な検査法をこれまでの研究に追加していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
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