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2018 年度 実施状況報告書

Xa阻害剤をターゲットとした新しい血管病治療の探索研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K08728
研究機関名古屋大学

研究代表者

坂野 比呂志  名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80584721)

研究分担者 杉本 昌之  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (00447814)
高橋 範子  名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10439177)
古森 公浩  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40225587)
柴田 玲  名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70343689)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードXa阻害剤 / 動脈瘤 / 血管病
研究実績の概要

In vitro マクロファージを培養後、TNF-αで刺激した。その後、アピキサバンを含む培地を添加し、qPCRを用いて遺伝子発現解析を行った。アピキサバン添加濃度は投与なし(control)、20µM、200µMの3種類の濃度で行った。qPCR時にはGAPDH,MMP-9,TNF-α,interleukin(IL)-1b,IL-6,NF-κB,monocyte chemotactic protein(MCP)-1のプライマーを使用した。
In vivo ApolipoproteinE-/-マウス動脈瘤モデルを使用した。生食群,アピキサバン投与群に分類し、動脈瘤形成の予防効果につき検討を行った。生食群(N=4),アピキサバン5mg/kg/day投与群(N=4)の2群に分類した。投与開始後7、14、21、28日目に超音波検査にて大動脈瘤径の計測を行った。投与開始後28日目に屠殺、解剖し大動脈瘤径を計測した。
結果:In vitro MCP-1 の遺伝子発現はcalcitriolを添加した群で有意に抑制された。IL-1b、MMP-9はcontrolに対して有意に遺伝子発現が高かった。TNF-α、NF-κBではグループ間に有意差を認めなかった。In vivo 生食群のうち1匹はday6に死亡した。胸腔内出血を認めたが、明らかな動脈瘤形成や破裂は認めなかった。アピキサバン群のうち2匹はday 6とday7に死亡した。原因は不明であった。解剖時の大動脈瘤径(生食群 vs アピキサバン群; 2.1 vs 2.7 (mm))には有意差は認めなかったがアピキサバン群でやや大きくなっている傾向を認めた。(p=0.46)。
結論:In vitroでは、アピキサバン投与でMCP-1の遺伝子発現は抑制されたが、IL-1b、IL-6、MMP-9では遺伝子発現を促進する結果となり、アピキサバンのマクロファージに対する抗炎症効果は確認できなかった。In vivoにおいても、アピキサバン投与では動脈瘤抑制、予防効果も明らかではなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Xa阻害剤には抗凝固作用以外の多面的作用を有し,血管保護作用を発揮することが示唆される.本研究ではまずアピキサバンによる動脈瘤形成抑制,予防効果を期待して,検討を行なったが,残念ながらその効果は明らかではなかった.

今後の研究の推進方策

今回アピキサバンによる動脈瘤形成抑制,予防効果は確認できなかったが,現在いくつかのXa阻害剤がすでに臨床応用されている.今後は同様のモデルを使用して,他のXa阻害剤による動脈瘤形成抑制,予防効果を検討していく.さらにXa阻害剤には多面的な血管保護作用が期待される.特にASOをはじめとした動脈硬化性疾患は,マクロファージを中心とした慢性炎症を基盤として発症する。最近の研究から,複数の凝固因子が血栓形成のみならず,さまざまな細胞に発現するプロテアーゼ活性化受容体(PAR)を介して,炎症反応にも関与することが知られている。なかでも,PARのサブタイプPAR-2が慢性炎症に強く関与する可能性が示唆されている。PAR-2の主要なリガンドの一つであるFXaを直接的に阻害するリバーロキサバンなどのXa阻害剤は,抗凝固作用による血栓塞栓症の抑制のみならず,急性冠症候群患者における心血管イベント抑制にも有用であることが示されている。実際に動脈硬化モデルApo-E欠損マウスでは,FXaの作用受容体であるPAR-1,PAR-2の発現亢進を認め、FXa阻害薬であるリバーロキサバンの投与により,同モデルの動脈硬化の形成やプラークの不安定化が抑制され,大動脈の炎症性メディエーターの発現が減少した。動脈瘤以外の他の血管病に対するXa阻害剤の効果検討として,我々がすでにモデルを確立した静脈グラフト内膜肥厚やステント再狭窄の抑制効果を検討していく.また同様に下肢虚血モデルにおける血管新生能についても検討していく.

次年度使用額が生じた理由

思っていた額と実際の額に誤差が生じたため、残高分を物品費として使用予定。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Proximal Bare Stent May Reduce Bird-Beak Configuration, Which is Associated with Distal Migration of Stent Graft in the Aortic Arch.2019

    • 著者名/発表者名
      Banno H, Akita N, Fujii T, Tsuruoka T, Takahashi N, Sugimoto M, Niimi K, Komori K
    • 雑誌名

      Ann Vasc Surg

      巻: 56 ページ: 108-113

    • DOI

      10.1016/j.avsg.2018.08.081

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Long-term fate of renal function after open surgery for juxtarenal and pararenal aortic aneurysm.2018

    • 著者名/発表者名
      Sugimoto M, Takahashi N, Niimi K, Kodama A, Banno H, Komori K
    • 雑誌名

      J Vasc Surg.

      巻: 67(4) ページ: 1042-1050

    • DOI

      10.1016/j.jvs.2017.07.121

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Anatomical Suitability of the GORE EXCLUDER Iliac Branch Endoprosthesis in Japanese Patients with Common Iliac Aneurysms Treated by Standard EXCLUDER Endografts.2018

    • 著者名/発表者名
      Sugimoto M, Takahashi N, Niimi K, Kodama A, Banno H, Komori K
    • 雑誌名

      Ann Vasc Surg

      巻: 50 ページ: 179-185

    • DOI

      10.1016/j.avsg.2017.11.071

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Three cases of dorsal metatarsal artery bypass in patients with Buerger disease.2018

    • 著者名/発表者名
      Kodama A, Takahashi N, Sugimoto M , Niimi K, Banno H, Komori K
    • 雑誌名

      J Vasc Surg Cases Innov Tech.

      巻: 4(3) ページ: 185-188

    • DOI

      10.1016/j.jvscit.2018.03.011

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 大動脈弓部TEVARにおいて中枢ベアステントは,末梢マイグレーションの誘因となるバードビーク 発生率を減らす2018

    • 著者名/発表者名
      坂野比呂志、川井陽平、藤井孝之、秋田直宏、鶴岡琢也、榊原昌志、高橋範子、杉本昌之、新美清章、古森公浩
    • 学会等名
      第118回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] 瘤径拡大を伴うTypeII Endoleakの発生予測因子の検討―術前の瘤内血栓に注目して―2018

    • 著者名/発表者名
      藤井孝之、坂野比呂志、秋田直宏、川井陽平、 榊原昌志、鶴岡琢也、高橋範子、杉本昌之、新美清章、古森公浩
    • 学会等名
      第118回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] 当科における弓部大動脈瘤の治療方針とその成績2018

    • 著者名/発表者名
      秋田直宏、藤井孝之、川井陽平、鶴岡琢也、榊原昌志、高橋範子、杉本昌之、新美清章、徳田順之、坂野比呂志、碓氷章彦、古森公浩
    • 学会等名
      第46回日本血管外科学会学術総会
  • [学会発表] 腎動脈遮断を要する腹部大動脈瘤に対するOpen surgeryの成績2018

    • 著者名/発表者名
      杉本昌之、川井陽平、藤井孝之、秋田 直宏、鶴岡 琢也、榊原 昌志、高橋 範子、新美 清章、坂野比呂志、古森公浩
    • 学会等名
      第46回日本血管外科学会学術総会
  • [学会発表] 腹部大動脈瘤ステントグラフト治療の現状―ステントグラフト実施委員会からの報告―2018

    • 著者名/発表者名
      古森公浩
    • 学会等名
      第27回教育セミナー
  • [備考] 名古屋大学 血管外科

    • URL

      http://www.vascsurg.jp/

  • [備考] 名古屋大学医学系研究科・医学部医学科 血管外科(第一外科)

    • URL

      https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/laboratory/clinical-med/surgery/vascular-surg/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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