研究課題/領域番号 |
18K08733
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村岡 玄哉 岡山大学, 大学病院, 医員 (90816258)
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研究分担者 |
内田 治仁 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (00550857)
大澤 晋 岡山大学, 大学病院, 講師 (20643414)
藤井 泰宏 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (40534673)
中谷 達行 岡山理科大学, 付置研究所, 教授 (50520920)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダイヤモンドライクカーボン / 人工血管 / ePTFE / 細径 / 動脈置換術 / うさぎ |
研究実績の概要 |
始めミニブタの頸動脈置換術を用いての実験を検討していたが、手術のしやすさから実験動物をビーグルに変更した。ビーグルを用いて、片側の頸動脈にDLCコーティングePTFE人工血管、反対側頸動脈に通常のePTFE人工血管を用いて動脈置換術を行い、DLCコーティング有無で開存を比較検討した。DLCコーティング人工血管では薄く均一な新生内膜ができているのに対し、通常の人工血管では内膜が不均一に肥厚しさらに肥厚した内膜に解離が生じていることが観察された。また、人工血管内の開存率はDLCで良好であった。しかしながら、開存率そのものは、DLC有無で有意な変化を認める事ができなかった。また、ビーグルは高額であり数を増やしての実験の遂行が金額的に困難であった(本研究費のみではなく、他の資金も使用が必要であった)。それはミニブタも同様である。そこで、個体単価が低く、麻酔も自分たちでかけることができ、さらに細径の動脈置換術ができる、ウサギを用いて動脈置換術の研究をつづける事にした。また、ビーグルの実験では、DLCによる有意な開存率向上は認められなかったため、DLCの性能改良が必要と判断し、酸素ガスを付加したプラズマを用いた、酸素付加DLCを開発。新しく開発したDLCは従来のDLCとくらべて親水性が大きく向上していることを証明した。親水性が高い方が血液適合性が高いと複数の論文で示唆されており、酸素付加DLCを用いて、本開発研究を続行することになった。また、うさぎで大動脈置換術を施行する動物モデルを確立したが、大動脈置換時に生ずる僅かな時間の脊椎虚血により、脊髄麻痺がうさぎでは頻発することが確認された(ヒトではまず発生しない)。これは、脊髄動脈温存と、低温保護法で脊髄麻痺の回避が可能である事を確認し、問題を解決できた。今後、開発したうさぎ大動脈置換モデルと、酸素付加DLCによる、細径人工血管の開存率向上を目的とした研究を続行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物の変更、DLCによる開存率向上が思ったほどでない、といった問題が生じたが、新しい、うさぎ大動脈人工血管置換モデルの確立によりこなせる動物個体数の増加、コストの低減化が図れた。また、新しく開発した、酸素付加DLCにより、DLCの親水性は向上し、血液適合性はさらに向上したものと考えられる。若干の遅れは生じたものの、問題を速やかに解決でき、今後の研究進展は加速化可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、血小板付着試験、タンパク付着試験という物性試験も混ぜながら、うさぎ大動脈置換術による細径ePTFE人工血管開存率向上を証明したいと考えている。2019年度と2020年度で、通常のePTFE人工血管、従来のDLCコーティングePTFE人工血管、酸素付加DLC人工血管の各群を4~6個体ずつ、手術を行えればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた消耗品が少額で済んだため、残額が生じた。ただ、残額では1例も手術ができないので研究が進まない。今年度の少額の消耗品として使用させて頂く。
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