超音波が斜めに入射してもecho dropoutが起こりにくい表面形状として、先行研究で明らかになったとおり①表面が平滑(対照)、②表面に1mmの半球状突出、③表面に1mmの陥凹を有する金属板をfusion360で3D設計し、プリントした。一方、棒状の先端に1mmの突出を全周配置したものも同様に設計、プリントした。 これらを水浸し、超音波の入射角度を変化させながらエコー画像でどのように見え方が変化するかを検討した。平滑な金属板に比べ、陥凹・突出を形成した金属板は試料を傾けても比較的見えやすい印象があるが、ほぼ垂直に入射したときにはサイドローブなどのアーチファクトがかなり強く、近傍にある他の物体が見えづらくなることに気づいた。また、棒状の試料でも先端の突出形状の部分はシャフトの部分に比べて非常に輝度が高く、可視化の効果は顕著だが、やはりアーチファクトが強く、近傍にある物体の画像がマスクされてしまうという問題が残る。また、3Dプリントでは凹凸がないはずのシャフト部分にも多少の凹凸ができ、通常の手術器械のような光沢のある平滑な表面形状とは見え方が異なっていた。 これらの結果から、表面が見えやすくする工夫とともに、適度に反射を抑える工夫も合わせて必要であることが示唆された。たとえば、ステルス戦闘機のような、反射を抑える素材、表面形状である。この両面からのアプローチが必要であると結論した。 一方、金属表面の形状加工と同時進行で、既存の手術器械の表面に紙テープなど、反射が適度に抑えられ斜めでも見えやすい素材を貼付して、超音波ガイドで位置の認識、把持などを検討した。金属製の針にもこのような素材を貼付したもので検討し、比較的見えやすいという結果を得た。これらの結果から、編み糸と「高分子化合物を用いた針」がエコーガイド下手術には適している可能性が示唆された。
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