研究課題/領域番号 |
18K08741
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
柴田 利彦 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10260803)
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研究分担者 |
高橋 洋介 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20464620)
村上 貴志 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 登録医 (30747978)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 低侵襲心臓手術 / 3D画像 / Augmented reality 表示 / ロボット支援手術 / 術中計測 |
研究実績の概要 |
小切開弁膜症手術における3D計測技術を応用したシミュレーションシステムの開発を研究テーマとしている。 近年、小切開低侵襲心臓手術が増加している。小さな創部からの両眼立体視が困難となるため、我々は3D内視鏡を用いた手術を行ってきた。3D画像データによる三角測定法を応用し、術中3D計測を行うことを考えた。心臓手術において術中3D画像を用いた計測技術をシミュレーションに応用した報告はない。 3Dカメラ映像から得られた両眼の画像を用いて、測定精度の確認を初年度に行った。レンズから被写体までの距離、被写体の角度により測定誤差が生じることが予想される。臨床で許容される誤差範囲(0.5mm以下の誤差)をクリアするための方法を検討する。 複眼カメラシステムを用いて3D計測を行うが、その際に色調別フィルターをかけることにより計測指標となる点を抽出する。これにより3D計測を行う定点の同定が可能となる。測定値をもとに選択したサイズのデバイス(人工弁輪等)のAR(augmented reality:拡張現実)表示画像を臓器画像(あるいは術中画像)とスーパーインポーズするという手法を用いて手術シミュレーションの構築を目指す。定点の自動追尾ができればカメラ角度にかかわらず画像表示ができる。この成果は小切開心臓弁膜症手術の精度向上の一助となりうる。最近増加しているロボット支援手術は高精細な3D環境下手術に行われており、この画像を用いて計測技術およびAR表示技術の向上ができるかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AR(augmented reality:拡張現実)技術を利用し,内視鏡映像と弁輪形成リングの仮想画像を重畳することにより,手術のサポートをするシステムの構築を行った。 複眼カメラTMB-02をステレオカメラとして撮影を行った.光源は白色LEDリングを使用した.被写体として食用ブタ心臓片を用いた.計測の指標として手術で用いられている色素ピオクタニンをブタ心臓片上の3ヵ所に塗布し領域の抽出を行った.なお,分光反射率推定には分光反射率が既知の複数の物質データ(教師データ)が必要となる.この実験においては,あらかじめ狭帯域フィルタとモノクロカメラを用いて別の心臓片を撮影し,ピオクタニン塗布部を含む複数部位の分光反射率の実データを取得し,教師データとして使用した.撮影されたステレオ画像を450nm,540nm,700nmの分光反射率を用いて特徴抽出を行った.マーカーが抽出できていることが確認できた.各領域の重心位置からマーカーを用いて二点間距離の推定を行った.この結果に基づき,人工弁輪のAR表示を行いブタ心臓上にスーパーインポーズした画像を作成した.このAR表示は実際に紙のリングを置いたものとほぼ一致しており,提案システムの有効性が確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
心臓外科で最近使用されはじめたロボット支援手術システム(ダビンチ)は3Dカメラを有しておりその画像利用を検証する。従来の3D内視鏡カメラから出力される3D画像はside by side方式あるいはline by line方式に録画された画像であり、ビデオ出力を角度修正して計測するため必然的に誤差が生じた。一方、ダビンチシステムから出力される手術影像は右目と左目を分離した画像を別々に得られるため、角度修正を最小化することが可能であり、より精度の高い3D計測およびAR表示が可能であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は市販の複眼カメラシステムを購入予定であったが、自作のシステムを構築して3D画像解析を行った。色調別フィルターを購入したが、まとめ買いをせずに実験の進行に併せて適宜物品の購入を行った。実験継続状況に合わせて物品購入を行うが、余剰金は繰り越し次年度費用と合算して購入し使用する。
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