研究実績の概要 |
小切開弁膜症手術における3D計測技術を応用したシミュレーションシステムの開発を研究テーマとしている。 我々は3D内視鏡を用いた小切開低侵襲心臓手術を開始しその後ロボット心臓手術に至っている。どちらの手術においても3D画像が得られるため、3D画像データを用いた三角測定法を応用し術中3D計測を行うことを考えた。心臓手術において術中3D画像を用いた計測技術をシミュレーションに応用した報告はない。 初年度に測定精度の確認を行った。レンズから被写体までの距離、被写体の角度により測定誤差が生じることが予想されたため臨床で許容される誤差範囲(0.5mm以下の誤差)をクリアするための方法を検討した。 次に、複眼カメラシステムを用いた3D計測に必要な測定部位の定点認識を技術を検証した。白色LADを光源として用い複眼ガメラTMB-02をステレオカメラとして撮影した。摘出したブタ心臓僧帽弁輪上の3基準点に通常手術で用いるメチレンブルー色素を塗布した。この基準点を認識させるため450nm, 540nm, 700nmの分光反射率を用いて特徴抽出を行い3つの基準点を認識させた。複眼カメラの視差を利用して、基準点間の距離をはかり、その長さに相当する大きさの人工弁輪をAR(augmented reality:拡張現実)表示させてブタ心臓画面上にスーパーインポーズさせた。このAR表示は実際に計ったリングを置いたものとほぼ一致しており、本システムが臨床応用へのむけての可能性を示唆できた。 この方法を応用し、ブタ心臓で僧帽弁輪をピオクタニン色素でなぞり実際の面積を測定することへの応用を行った。長さという指標ではなく、合致する面積から人工弁輪のサイジングができる可能性がでてき、その成果を学会発表予定である。また、今後は通常の手術光源での得られたロボット手術での術中3D画像で同様のことが可能かを実証したい。
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