研究課題
今回の我々の研究課題は、冠動脈バイパス術における‘圧流量関係に基づく冠動脈バイパス術グラフト波形解析機器の開発’であった。冠動脈バイパス術において、術後の長期のグラフトの開存性は予後改善の重要な因子である。そこでよりQualityの高い手術を行い、かつ術中にその評価を行うことが重要な課題である。現在用いられているグラフト評価法は‘超音波トランジットタイム血流計’を用いたグラフトの血流量測定である。これはバイパス術後にグラフトの流量を測定するものである。しかし流量のみであり、例えばグラフト吻合部以遠の心筋血流が増加したのか、圧が増加したのかなど心筋自体の変化については全く情報を得ることができず、さらに収縮期・拡張期の位相についても全く考慮されていない。我々は心筋への血流供給は電気回路と同様の圧流量関係に支配されると考え、それをもとに、収縮期・拡張期の位相差も考慮した、グラフト血流及び心筋血流増加を定量的に計算できるアプリケーションを開発した。2019.6.30 このアプリケーションの整合性を確認するためにブタを用いた動物実験を行った。株式会社アイビーテック 神戸ラボにてブタ2頭を用いて実際に冠動脈バイパス術を行い、我々の開発した計算ソフトの妥当性を検証するためCombo wireをグラフと吻合部以遠の冠動脈に留置して、バイパス後の冠動脈血流増加量、圧の変化について検証した。その結果、心筋の灌流圧に関して我々の計算式と実測値の間に大きな隔たりを認めた。今回の実験が2頭のみの実験であったため、より症例数を増やして検討を行う必要性があるが、研究代表者の畑田充俊の勤務先移動に伴い実験がいったん中止となっている。現在当科の上松耕太を中心に再度この実験を継続することが決まっており、令和2年度の科学研究費助成にすでに申請しているところである。