研究課題
心臓手術直後の心房細動が、一般的な心房細動とは機序が異なり、手術による心房筋に対する炎症が大きく関与することから、抗炎症を目的に心臓手術後心房細動の抑制を目指した。今までにステロイドによる抗炎症療法により心房の炎症を抑えることによって興奮伝導を均一化し、心房細動の予防に効果的であることを明らかにしたが、心臓手術後にステロイドを使用することは感染のリスクを増加させるため臨床応用には適していないことから、好中球エラスターゼを選択的に阻害する薬剤であるシベレスタットナトリウムに注目したことが本研究の特徴である。薬物徐放化システムを用いることで、シベレスタットナトリウムをゼラチンに結合させ、手術時にシベレスタットナトリウムを結合させたゼラチンを心房表面に貼付し、経時的にシベレスタットナトリウムが心房に散布されることで心房細動が出現する時期に合わせて抗炎症作用を及ぼすことが可能になると考え、東京農工大学の研究分担者らとの共同研究から心房に貼付することで炎症を起こさない基剤を使用した心房貼付剤を開発してきた。シルク繊維を用いたドラックデリバリーシステムを研究したものの、薬剤徐放化のタイミングが難しく困難を極めた。素材の選定とシート化に苦労した。心房細動中の高額マッピングシステムを使用した評価をしており、徐放のタイミングと術後心房細動の発生時期のタイムラグがあり、調整を必要とした。本研究に当たってはコロナ禍にあって参集型のミーティングが難しく、情報共有に苦労した上に時間的余裕がなく、コロナ禍での他施設試験の難しさを痛感した。