研究課題
近年の研究から大動脈解離病態への炎症応答や細胞外マトリックス(ECM)代謝異常の関与が明らかにされつつある。我々はこれまでにIL-17経路がTGF-β経路を抑制しECM代謝の変調をきたすこと、ECM代謝には血管平滑筋細胞が重要な役割を果たしていること、またこれらの変化が大動脈壁の物理特性を制御することを見出した。さらに、塩分負荷が大動脈壁のストレス亢進および大動脈解離の増悪を引き起こすこと、また大動脈ECM強化が大動脈解離抑制につながることを見出した。本研究では大動脈解離病態で重要な役割を果たすECM代謝およびTGF-β経路に着目し、Salt-Inducible Kinase (SIK)の役割を明らかにすることを目的に研究を進めた。血管平滑筋細胞におけるSIKの役割を明らかにすることを目的に培養実験を行った。培養血管平滑筋細胞に塩分負荷を行うとSIK1、SIK3の発現が亢進し、その下流シグナル分子HDAC4のリン酸化が亢進していた。SIK阻害薬を培養血管平滑筋細胞に投与したところ、TGF-β経路の下流分子であるSmad2の活性化が有意に抑制され、平滑筋細胞の分化制御分子の1つであるStat3の活性化が有意に亢進していた。平滑筋細胞の分化におけるSIKの役割を検討した。SIK阻害薬を培養血管平滑筋細胞に投与したところ、収縮型血管平滑筋及び分泌型血管平滑筋のマーカー分子がいずれも亢進していた。これらの結果から、SIKは血管平滑筋細胞におけるECM代謝及び血管平滑筋分化において重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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