研究課題
大動脈解離は大動脈が破綻して死に至る重篤な疾患である。病態解明が進んでおらず、外科的治療以外に有効な内科的治療法はなく、また予防法もない。 我々は、マクロファージ特異的にIL-6系シグナルを亢進したmSocs3-KOでは血行動態負荷により解離を発症することを発見した。解離前の大動脈ではマクロ ファージが炎症性へと形質変化しており、過剰な炎症応答に寄与していると考えられた。一方、平滑筋にも形質変化が見られた。 一般に、組織損傷が起こると平滑筋は収縮型から合成型へと変化し、増殖と細胞外マトリックス合成を行って組織修復へ向かう。野生型では血行動態負荷により収縮型平滑筋が減少し、組織修復に必要な分泌型平滑筋が増加したが、mSocs3-KOでは一時的に分泌型が増加するものの解離前には減少しており、増殖能の変化も同様であっ た。本モデルではマクロファージの 炎症性変化と平滑筋の不適切な形質転換により、炎症と組織修復のバランスが崩れ解離を発症すると考えられた。 我々は解離前の遺伝子発現解析から、平滑筋が不適切な形質変化を遂げている原因の一つにInk4a/Arf, Rad51などcellcycle inhibitorの発現が増加していることをつきとめた。これらは細胞老化に関わる因子としても知られ、mSocs3-KOの過剰な炎症によるDNAダメージにより発現が惹起された可能性がある。 平滑筋培養実験ではアンジオテンシンIIでArf発現が誘導され、コラーゲン架橋阻害薬であるBAPNとアンジオテンシンIIによる解離モデルにおいては、解離前の 微小な中膜損傷に一致してArfが発現していた。これにより、cell cycle inhibitorは解離に共通したメカニズムであることが示唆される。
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Journal of the American Heart Association
巻: 7 ページ: -
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