研究課題/領域番号 |
18K08749
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
東 信良 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30250559)
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研究分担者 |
菊地 信介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80596297)
吉田 有里 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (50646057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 下肢閉塞性動脈硬化症 / 生命予後 / 幹細胞機能 / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
下肢閉塞性動脈疾患(PAD)は、冠動脈疾患(CAD)や脳血管疾患(CVD)と並んで3大動脈硬化性疾患の大きな柱であるが、PADはCADやCVDとの合併頻度が高く、かつ、PADが最も生命予後が不良であることが知られている。さらに、PADが合併するとCADやCVDの予後が著しく不良になることも知られている。しかし、なぜ、PADがそれほど動脈硬化症例の予後を不良にするのか、分子生物学的機序はよくわかっていない。そこで本研究では、「PAD患者では、血管系幹細胞の機能が低下していて、血管細胞再生や血管修復能が障害されている」という仮説を立てて、研究に着手した。 流血中には、血管幹細胞の機能を維持したり、逆に機能を老化させるような物質が存在しているのではないかという仮説のもと、流血中のmicroRNA(miR)に着目して、予後が特に不良なPADの末期である重症下肢虚血症例の血中miRを解析している。生命予後良好であったPAD患者と1年以内に死亡したPAD患者のマイクロアレイを実施して、生命予後不良に関わる可能性のあるmiR 14個と、良好な生命予後をもたらす可能性のあるmiR3個を同定した。今後、幹細胞培養系で同定した計17種のmiRの機能解析を行い、候補miRを絞り込み、幹細胞老化に関わるmiRの解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当大学の倫理委員会の承認(19084号)を得て、臨床例での検討を開始した。 臨床研究登録したPAD症例で2年生存が確定している4例と1年以内に死亡した4例についてmiRのマイクロアレイ解析を行ったところ、死亡例に高発現しているmiRが14個、生存例で高発現しているmiRが3個検出された(コントロールに比して2倍以上のもの)。 一方、PAD患者の流血中の幹細胞は、数が少なく、かつ、その増殖能が不良なのか、培養確立が不安定であり、それを用いた増殖能や多分化能の検討は困難な状況である。 その理由として、PAD患者の流血中の幹細胞は、培養系の確立が不安定であり、背景には幹細胞数の低下や機能低下が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
PAD患者の流血中幹細胞の機能解析は非常に興味深いが、数が少なく、かつ、培養確立が容易ではないことから、その研究を継続するものの、追加研究として、市販のEPC細胞を用いた研究を以下の方法で行っている。 上記の患者で得たmiR(生存延長に寄与する可能性のあるmiRあるいは死亡を早める方向に働く可能性のあるmiR )をEPC細胞株にプラスミド導入して、EPC細胞の増殖能や分化能を測定する。そこで、EPCへの影響が大きいmiRについて、今度はそのノックダウンをEPCに起こして、EPC増殖能や分化能への影響を確認する。このようにして患者から得られたmiRのEPCにおける機能解析を行って、PAD患者の生存や細胞修復に影響を与えるmiRを絞り込む。 こうした手法により、流血中のmiRあるいはそれを含むエクソソームが幹細胞機能に影響を与えることでpolyvascular disease が起こり、ひいては生命予後を悪化させるという仮説を検証する。
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