研究課題/領域番号 |
18K08761
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
美甘 章仁 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30372709)
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研究分担者 |
濱野 公一 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60263787)
中村 玉美 山口大学, 医学部附属病院, 診療助教(4日/週) (40815669)
鈴木 亮 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10570319)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心筋幹細胞(CDC) / 心筋梗塞 / 低酸素プレコンディショニング |
研究実績の概要 |
超高齢社会である我が国の心不全は(潜在的な患者を含めると)160万人にのぼり、うち半数は虚血性心疾患によるとされる。重症心不全に対する心移植はドナー不足などの問題から普及に至らず、幹細胞を用いた細胞移植療法が期待されてきた。細胞を移植部位に留まらせる方法として細胞シート技術が確立され、現在はiPS細胞由来心筋細胞や骨格筋芽細胞を用いた細胞シート移植が積極的に研究されている。一方で、移植細胞による腫瘍形成、細胞の準備にかかる費用と時間などは課題であり、これらに対する解決策が必要である。また、近年の研究から移植した幹細胞が心臓組織へ生着することは稀であり、これらが心筋細胞へ分化することよりもむしろ、分泌される成長因子やエクソソームが心機能改善効果の主因であることが明らかとなった。 当研究室は心筋幹細胞(cardiosphere-derived cell(CDC))の研究において長年の実績があり、CDCシート移植が小型動物の陳旧性心筋梗塞モデルにおいて心機能を有意に改善することを報告してきた。低酸素プレコンディショニングなど、幹細胞の機能賦活化に関する研究においても実績がある。また、CDCは成長因子やエクソソームの分泌能に優れることが知られている。そこで本研究では、中型動物であるラビットの陳旧性心筋梗塞モデルにおいてCDCシートが心機能改善効果を示すか否かを検証する。小型動物では困難であった詳細な検討を、CDCの機能賦活化を併用して行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウサギ心筋幹細胞(rCDC)を心臓組織片から採取し、精製度をFACS解析によるCD105およびCD90の発現で確認し、rCDCシートを作製した。続いて低酸素プレコンディショニングによる積層化rCDCシートの機能賦活化を検証した。培養上清中のVEGF濃度をELISA法で測定したところ、低酸素刺激により有意な上昇を認めた。TUNEL染色による細胞死の評価では、低酸素刺激による有害事象を認めなかった。積層化rCDCシートの培養上清をHuvec細胞に添加し、血管新生能を評価したところ、低酸素刺激により有意に高い形成能を認めた。 ウサギ陳旧性心筋梗塞モデルを作成し、機能賦活化したrCDCシートを梗塞部を中心に貼付して、心機能改善効果を評価した。8週間後の心機能は、シート治療群がコントロール群より有意に高く、心機能改善効果を証明できた。また、有意に多くの新生血管を認め、心機能改善の機序の一部だと考えられた。以上から、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
シート治療による心機能改善や血管新生能の活性化を示したが、機序の解明を更に進める。まずは線維化や細胞死の制御などについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より順調に実験が進み、ラビットの購入を少し抑制できたため
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