平成30-31年度はジメチルセレコキシブ(DMC)の心筋リモデリングに対する効果をin vivo実験にて検証した。 C57BL/6マウスに対し、非選択的β受容体刺激薬であるイソプロテレノール(ISO)を持続皮下投与し(20mg/kg/day)、治療薬であるDMCは同期間エサに混合(1000ppm)して経口摂取させた。2週間後、ISO投与により誘導された心臓リモデリング(心筋肥大、心臓線維化)をDMCが抑制した。さらに、western blottingによる機序の検討により、DMCはAkt阻害により心筋肥大抑制因子GSK-3を活性化することで心筋肥大を抑制していることが示唆された。オートファジーのマーカーの一つであるBeclin-1の発現がISO投与により減少したが、DMC投与によりこの減少が抑制された。また、DMCはISOによるオートファジー抑制因子mTORの発現増加を抑制した。このことから、ISOによるオートファジー活性の減弱をDMCが抑制することが示唆された。 令和2年度は、in vitro実験を施行し、DMCの機序を検証した。ラット心筋細胞H9c2細胞に対し、DMC (5μM)またはvehicleで3時間前処置した後、ISO (3μM)にて48時間刺激した。ISO投与により細胞面積が増大した(すなわち心筋細胞肥大が誘導された)が、DMCはこれを有意に抑制した。また、GSK-3βの不活化の指標であるリン酸化の割合はISOにより上昇傾向を認めたが、DMCはこれを有意に抑制した。このことから、DMCはin vivo実験と同様、肥大抑制因子GSK-3βを活性化させることが確認され、これがDMCの心筋細胞肥大抑制の機序である可能性が示唆された。
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