研究課題
本研究は、名古屋工業大学医用生体工学研究室中村匡徳教授の研究室と東京都立大学システムデザイン学部坂元尚哉准教授の研究室との共同研究であり、大動脈 解離症例を対象に数値流体力学計算(CFD: computational fluid dynamics)を実施し、真腔と偽腔の血流動態を明らかにする。大動脈壁にかかる圧力やせん断応力などの分布図を作成後、大動脈組織の構造変化とCFD解析の関連性を検証することを目的としている。 2022年度は、1990年~2020年の期間に急性A型解離の診断で手術を施行した865症例の遠隔期成績を解析するとともに、末梢側の胸部大動脈に追加治療を行った 76症例の治療成績を調査した。865例の10年生存率・大動脈イベント回避率・遠位再手術回避率は、それぞれ68.5%・72.2%・82.7%であった。また、遠隔期に初回TEVARを施行した15例の早期・遠隔期治療成績を解析し、解離血管にlandingした群は大動脈イベント発生率が高く遠隔予後が不良であった。本研究成果は、2023年4月28日日本大動脈外科研究会で発表した。CFD解析は、急性A型大動脈解離の診断で緊急手術を行った症例のうち、遠隔期に10 mm以上の大動脈拡大を認めた9例と、大動脈拡大が5mm以下であったコントロール群の6例の2群間で、初回手術直後の造影CTデータを使用し、偽腔内部の壁せん断応力・大動脈圧力を比較する研究を実施した。CFD解析結果では、大動脈拡大群で、偽腔壁の圧力上昇が確認されており、遠隔期の大動脈拡大の予測因子として、偽腔壁圧力の有用性が示唆された。本研究結果は今後、国内外の学会で発表予定である。
すべて 2022
すべて 学会発表 (2件)