研究課題/領域番号 |
18K08775
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
北田 正博 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60332483)
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研究分担者 |
大崎 能伸 旭川医科大学, 大学病院, 教授 (30191935)
佐々木 高明 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70516997)
石橋 佳 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80646076)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺癌 / 光学的診断 / アミノレブリン酸 |
研究実績の概要 |
【はじめに】胸腔内悪性病変に対する画像診断や手術時の可視診断には限界があり、 低侵襲で確実かつ客観的、な評価、診断システムの開発が希求されている。我々は自 家蛍光観察システムを応用した光学的診断法の研究を行ってきた。自家蛍光観察シス テムとは400~420nm前後の励起光に対する正常組織が放つ520nm前後の緑色自家蛍光と、悪性腫瘍組織で起きる蛍光発生物質の減少による色調の変化を観察、診断方法である。しかし、画像の鮮明さ、明瞭な色調差が足りない、血液や反射光の影響があるなどの問題点もあり、改善を期待して光増感物質の5ALAを併用した。経口投与した5ALAはプロトポルフイリンIX(PpIX)に代謝、悪性細胞内に留まり、630nm程度の赤色~ピンク色の発光を呈する事象を利用した光学的診断である。肺癌胸膜浸潤を含めた、転移性肺腫瘍や悪性胸膜中脾腫などの胸膜悪性病変に対する低侵襲診断の有用性を検討した。【対象と方法】2017年1月より2018年2月までに、CT上胸膜浸潤の可能性がある肺癌42例、転移性肺腫瘍12例、胸膜腫瘍4例,良性腫瘍3例の合計61例に対し本手技を施行した。手術開始3-4時間前に15~20mg/kgの5ALAを経口投与し自家蛍光観察システムを用いて胸腔内の観察を行った。【結果】1) 描出状態:白色光では不明瞭な腫瘍部が、本手技では比較的明瞭な境界線を示した赤色蛍光が描出された。2)描出状況:術前PL1以上と診断するも病理診断でpl0であったのは21例(50%)であった。肺癌腫瘍部位に赤色蛍光が確認可能であったのは35/42(83.3%)であった。pl1~pl3は11/12(91.7%)、pl0症例は23/30(76.6%)であったがすべてPL1と術前診断した症例であった。【結語】5ALAを用いることで、胸膜悪性病変の局在診断が可能になった。早期の胸膜中皮腫の診断や微小な播種性病変の発見の他、肺癌胸膜浸潤診断による区域切除等の縮小手術の可否への応用も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌胸膜浸潤については、浸潤の有無の確立は、まだ難しい状況ではある。pl0で、蛍光が確認される症例も少なくなく、その波長や輝度によって、胸膜浸潤の有無についての精度を上げることができないかを検討している。更に胸膜浸潤症例における、胸膜播種性病変の発見についても検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、肺癌胸膜播種についての研究を進める。胸膜播種は、画像上の胸水や胸膜の小結節で発見される例が多いが、術中に初めて診断される場合も少なからずある。(特に肺癌胸膜浸潤例)また、微小な胸膜播種は見逃されることもあり、それが、早期の胸腔内内再発の一因となっている。本システムによる精度の高い診断を確立させるよう研究を進めていく予定である。
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