研究課題/領域番号 |
18K08778
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 義人 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (80375691)
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研究分担者 |
吉野 一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40281547)
本橋 新一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (60345022)
鈴木 秀海 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (60422226)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺移植後急性拒絶反応 / 制御性T細胞 / 遺伝子導入マウス / IL-2複合体 |
研究実績の概要 |
2018年度は以下の研究を行い、発表を行った。 (背景)IL-2とそのリガンドに結合する抗体(JES6-1)によるIL-2複合体(IL-2cx)が制御性T細胞(Treg)を誘導するという知見を基に、IL-2cxの術前導入がマウス肺移植後急性拒絶反応を長期間抑制することを我々は示してきた。本研究の目的は、ジフテリア毒素(DT)受容体による選択的機能欠損マウス を用い、この免疫寛容機序の中でのTregの役割を明らかにする。 (方法)Foxp3プロモーターの基にDT受容体を発現させたC57BL/6系遺伝子導入マウス(Foxp3DTR)をレシピエントとした。このマウスにDTを投与するとFoxp3陽性細胞が特異的に破壊される。全てのレシピエントにIL-2cx を術前投与した上で、Balb/cをドナーとする同所性マウス肺移植を行った。実験群にはDTを、対照群にはリン酸緩衝生理食塩水を投与した。術後15日目に呼吸生理学的検査を行った上で犠牲死させ、検体を採取し、フローサイトメトリー、組織学的検査を施行した(各群n=9)。 (結果)実験群の移植片は対照群と比べて、肉眼観察においても組織学的検査においても著名な急性拒絶反応所見が観察され、国際心肺移植学会による急性拒絶反応スコアにおいても実験群が有意に高値であった(p<0.05)。フローサイトメトリー検査では、実験群のグラフト肺内のFoxp3+CD4+CD25+Tregの絶対数及び分布が対照群と比べて有意に低値であった(p<0.05)。左移植片の肺コンプライアンス、血中酸素分圧も、IL-2cx群が有意に低値であった(p<0.05)。 (結語)Foxp3陽性細胞選択的欠損マウス を用いたマウス肺移植実験により、IL-2cxによって誘導されたTregが、その免疫寛容誘導の機序の中で重要な役割を果たすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究で、IL-2複合体による肺移植後急性拒絶反応はTregが強く関与していることを、遺伝子導入マウスを用いた実験で証明することができた。 また、この知見は2018年度の各学会で発表されている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の通り、2019年度はIL2複合体による副作用の評価を行う。今まで同様のマウス肺移植モデルを用い、身体所見、異常行動の有無、栄養状態・摂食行動、排泄物等を観察し、ショック・過敏症、皮膚、感覚器、筋肉、精神神経、行動様式を確認する。また、採取された血液データ、病理所見、呼吸器データ、画像所見から、血液、電解質、肝機能、腎機能、呼吸機能、心機能所見を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の研究施設の異動に伴い、分担者の研究資金使用が滞ったためである。次年度は研究連携を滞りなく進めていく所存である。
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