研究課題
手術による根治を目指す上で最も重要なのは再発を制圧する切除範囲を決定することであり、癌細胞遺残は最も避けなければならないことである。以前より術中に簡易的に診断・癌細胞の同定する方法が求められているものの未だ十分ものがないのが現状である。 我々は初期の基礎研究において蛍光プローブgGlu-HMRGを用いて肺腺癌細胞株(A549、H441)の蛍光画像から癌細胞を認識可能であることを証明した。(日野らTransl Oncol, 2016) そこで「肺腺癌およびその組織亜型」の検出を目指し、手術検体を用いて、新規創製した約300類の癌特異的蛍光プローブ(浦野ら, Sci Transl med, 2011)の蛍光強度を測定した。肺腺癌の手術検体を用いた研究ではライセートスクリーニング結果をもとに選定した蛍光プローブ(7種類)の中で3種類の蛍光プローブが平均AUC:0.83 (0.815-0.84)であり、識別能力が良好であることが証明され、肺癌特異的蛍光プローブとなる可能性が示唆された。本研究では新規癌特異的蛍光プローブを用いた「術中迅速癌細胞遺残診断」を目指している。具体的には、①肺癌や他癌肺転移に対する肺切除の際の切除断端遺残、②胸腺腫摘除の際の胸腔内播種、④悪性胸膜中皮腫手術の際の胸腔内癌細胞遺残の診断に有用と考えている。また、癌細胞遺残ではないが、近年、肺癌再発因子の一つとして注目されているSpread Through Air Spaces (STAS)は腫瘍周囲の肺胞腔内にばら蒔かれた肺癌細胞(Spread through air space: STAS)を示しているが、これに関しても術中同定、術中診断が可能となれば、手術切除範囲の決定につながっていくと考えている。しかし、現時点では蛍光プローブ毎、組織型毎に蛍光強度の違いがあり、その選別・同定に困難を極めている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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