研究課題/領域番号 |
18K08785
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
鳥羽 博明 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (40403745)
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研究分担者 |
川上 行奎 徳島大学, 病院, 特任講師 (00596249)
河北 直也 徳島大学, 病院, 特任助教 (60522266)
森本 雅美 徳島大学, 病院, 特任助教 (90563817) [辞退]
谷原 史倫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 特任助教 (90754680)
平田 真樹 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (10815583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 急性肺障害 / 肺の修復・再生 / p53遺伝子改変ブタ / 肺オルガノイド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,p53がブタ肺の急性気道・肺胞上皮の障害・再生にどのような役割を果たすかどうかについて明らかにすることである.すでに計5症例において野生型ブタのLipopolysaccharide (LPS)誘導急性肺障害モデルの作成は終了しているが,今年度はp53 KOブタを用いて行った(n=3).方法は,野生型ブタと同様,全身麻酔で気管支鏡下にLPS1㎎/kgを右前葉に選択的に投与し,コントロールとして左前葉に選択的にPBSのみ同量を注入した.投与直前・2時間後・6時間後・48時間後をタイムポイントとして,CT撮像,気管支肺胞洗浄液(BAL)・血清・肺組織を採取した.野生型ブタ同様,CTでは2時間後すでにLPSを投与した右前葉には浸潤影が出現し,48時間後にはconsolidationを呈していた.左前葉のコントロール群と比較肺乾湿比,BAL中細胞数もコントロール群と比べて有意に増加していた.また,組織学的にも,急性肺障害を呈していることを確認することができた.加えて,血清・BALサンプルを用いて,いくつかのサイトカイン測定(TNF-α,IL-6,IL-10)を行い,preliminaryではあるが結果を得た.さらに引き続き,ブタ肺からのオルガノイド作成も試みた.まず野生型ブタの気管~気管支を採取した後,コラゲナーゼ処理で気道上皮のみを得て,基底細胞マーカー(p63+/ITGA6+)によるFACS解析を行い,再現性をもって陽性細胞を選択的に回収することはでき,3.0×104/mlに調整し,differentiation medium内で3D培養した.経時的に観察し,14日間培養したところ,Organoid様構造物が形成されたことは確認できた.各種マーカーの免疫染色を行ったが,現時点ではまだ正常な気道上皮細胞への分化が確認できる段階には至っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
p53ノックアウトブタの作成が難しいことが最も大きな要因である.これまでノックアウトブタ作成を数回トライしたが,安定的にp53ノックアウトブタを使用できる状況に現時点ではない.p53ノックアウトブタは妊娠後~使用できるまでには数か月間を要する.しかしながら,LPSやPDOCによる気道肺障害モデルは再現性をもって確立できているため,十分なP53ノックアウトブタが確保した後,実験を進めることは可能である.ブタ肺からのオルガノイド作成に関しては,条件設定を微調整することで,可能な段階まで来ており,引き続き進めていくことが可能であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
コラボレーション相手である当大学分子医科学教室・生物資源産業学部の研究分担者と緊密に意見交換し,定期的にカンファレンスを行っている.現在,p53ノックアウトブタの作成をより進めてもらっており,使用可能になり次第,速やかにLPS・PDOCモデルを作成し検討する予定である.ブタ肺オルガノイド作成については,特に培養液と適切なタイミングでの分化誘導のために増殖因子投与が重要と考えられるため,量と種類を工夫しながら進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
未施行のMicro array用のキット・外注費やサイトカイン・ケモカイン測定用のキット・外注費に加えて,高額な抗体や分化促進因子が未購入であることが未使用額として生じたと考えている.上記に示したように,残額は特にMicro arrayやケモカイン・サイトカイン測定の外注費に充てることに加えて,p53ノックアウトブタを量産させるためのコストに使用したいと考えている.
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