研究課題/領域番号 |
18K08787
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田川 哲三 九州大学, 大学病院, 助教 (90419557)
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研究分担者 |
豊川 剛二 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 呼吸器外科医師 (30627261)
平井 文彦 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (70645407) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / 肺癌 / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
二年目は①悪性胸膜中皮腫(MPM)患者の切除検体を用いて、腫瘍細胞におけるIDO1発現を免疫染色にて評価し、②マウスMPMモデルを用いて、胸水・腫瘍細胞におけるIDO1発現を評価した。① 2001年から2019年に九州大学、九州がんセンター、九州医療センターにて切除もしくは生検を行われたMPM185例におけるIDO1発現を免疫組織化学染色にて検討し、PD-L1発現を含む臨床病理学的因子および予後との関係を検討した。185例の背景は65歳以上:75例(40.5%)、男性155例(83.8%)、喫煙症例:120例(64.9%)、StageI/II:89例(48.6%)、組織型は上皮型95例(51.3%)、その他29例(15.6%)、不明61例(33.0%)であった。根治手術例が53例(28.6%)、化学療法施行症例が162例(87.6%)、全生存期間中央値が15.7ヶ月、無増悪生存期間中央値が10.8ヶ月であった。九州大学病院で切除した46例のIDO1発現に関しては1%未満:14例(30.4%)、1-5%:13例(28.3%)、5-50%:9例(19.6%)、50%以上:10例(21.7%)であった。PD-L1発現に関しては1%以上: 2例(SP142抗体)、3例(28-8抗体)であった。IDO1発現と臨床病理学的因子に現在のところ有意な関連はなかったが、非上皮型においてIDO1≧5%が多い傾向があった(p=0.0618)。予後とは有意な関連は認められなかった。②マウス胸腔にAB12(マウスMPM細胞株)を注入しMPMモデルを作成し、day3,7,10,14に腫瘍および胸水、脾臓を採取した。腫瘍のIDO1、CD8、CD4、Foxp3の免疫染色を行い、系時的に評価した。また、胸水・脾臓の免疫細胞の表面抗原をフローサイトメトリーにて評価した。MPMモデルマウスの腫瘍においてIDO1は約20-30%の腫瘍細胞に発現が認められた。フローサイトメトリーでは腫瘍摂取後徐々に胸水中のミエロイド抑制細胞(MDSC)が増加していることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多施設のヒトMPM切除検体を用いてIDO1発現を評価する系を確立することができた。また、マウスMPMモデルにおいて腫瘍細胞におけるIDO1発現を検討することができ、今後のID01抑制による効果を検証するための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体におけるIDO1発現は非上皮型に関連している傾向があり、非上皮型MPMが予後不良である一因となっている可能性が考えられる。他施設の臨床検体に関しても免疫染色を追加していく予定である。MPMモデルマウスに関しては胸水中のMDSCの増加が認められた。IDO1がMDSCの活性化、誘導に関与しているとの報告もあり、MPMにおけるIDO1の抗腫瘍免疫抑制作用の一端を見ている可能性が考えられた。また採取した腫瘍にIDO1発現が認められたため、抗IDO1阻害薬を用いた実験に同モデルが使用できると考えられる。今後、治療モデルを用いた実験を進めていく予定としている。
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