研究実績の概要 |
1:GPER、ESR2の非小細胞肺癌切除標本における発現解析:2016/1/1から2016年12月までの111例の非小細胞癌症例においてGPERおよびESR2の発現をrealtime-PCR法で定量した。まず、正常肺と腫瘍部の発現を比較すると、GPERは正常部で有意に発現が高値であった(P<0.001). ESR2も正常肺で高値(P=0.02).腫瘍部、正常部とも発現に男女差はなし。年齢(70歳超)、喫煙の有無で有意差はなし。組織型では腫瘍部のGPERが腺癌群で有意に高値(P=0.01), 正常部のESR2が腺癌群で高値だが有意差なしであった。病期では早期例(StageIA1, IA2)でGPERが有意に高値。EGFR変異陽性群ではGPERが有意に高値であった。予後は無再発生存期間でGPERのREの閾値を70とすると、発現低値群で有意に予後不良であった(P=0.01).ESR2では有意差なし。 GPER, ESR2の免疫染色を同症例について行ったがGPERに関しては染色が不良でありRealtime-PCRの結果との整合性が見られなかった。抗体や手技的問題が考えられた。ESR2に関してはよく染色され、PCRの結果とよく相関した。 2:GPERプロモーターのメチル化解析 GPER発現低下症例10例でPyrosequence法にてGPERプロモーターのメチル化解析を行ったが、いづれもメチル化を認めなかった。本遺伝子の発現には遺伝子のメチル化は関与していないと判断した。 ①腫瘍部では正常部よりGPER、ESR2の発現が低下しており、エストロゲンからのシグナルが入りにくくなっている。②このような傾向は非腺癌、進行例で顕著である。③GPERの発現低下は非小細胞癌における予後不良因子となっている。
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