研究課題
今回の研究では、ゲノム不安定性の結果として生じる腫瘍内不均一性に着目し、ドライバー遺伝子変異を有する肺癌の代表格であるEGFR遺伝子変異肺腺癌における腫瘍内不均一性の機序の解明をめざし、①EGFR変異肺癌における腫瘍内不均一性に関与する因子の探索と解析、②EGFR変異肺癌における進化的発育に関与する因子の探索と解析、の両面から研究を進めた。1)術前CT画像におけるEGFR変異陽性肺癌の進化的発育を示唆する所見から、肺癌を発育段階別に分け、EGFR遺伝子変異別に発育の特徴を調べた。同症例のEGFR遺伝子変異方および臨床病理学的因子、予後との関係を検討した。Ex21L858R陽性肺癌はEx19del陽性肺癌よりGGOを有する腫瘍の割合が多く、無再発生存が良好であった。肺癌手術症例において、EGFR exon 21変異型腺癌はexon19変異型および野生型腺癌に比べGGOを有するものが多く、早期に切除される割合が高いことが示唆された。2)切除されたEGFR変異陽性肺腺癌症例(exon19欠失)から、①CT画像にてC/T比<50%かつpT1mi以下の腫瘍をgroup 1 (G1)、②C/T比>50%かつ術後病理診断でinvasive adenocarcinomaであった腫瘍をgroup 2(G2)とし、Ion AmpliSeq Comprehensive Cancer Panel (409遺伝子)にて遺伝子変化を検討した。観察されたvariant総数はG1に有意に多かった。variant種類別に差は無かったが、ins-delはG2に多い傾向があった。EGFR ex19変異陽性肺癌は発育の過程で、腫瘍内の細胞構成が変化する可能性が示唆された。さらに、NGSパネルの結果を解析し、EGFR変異肺癌における進化的発育に関与する因子の探索を行った。
すべて 2021
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Ann Surg Oncol
巻: 28 ページ: 685-694
10.1245/s10434-020-08851-6