研究課題/領域番号 |
18K08796
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 俊輔 自治医科大学, 医学部, 教授 (10245037)
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研究分担者 |
丹羽 康則 自治医科大学, 医学部, 講師 (20406060)
坪地 宏嘉 自治医科大学, 医学部, 教授 (50406055)
小形 幸代 自治医科大学, 医学部, 講師 (10448847)
大谷 智仁 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40778990)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺癌 / 左肺上葉切除術 / 左房血栓 / 心原性脳梗塞 / 4DCT / 血流解析 |
研究実績の概要 |
共同研究者である大阪大学基礎工学部において4DCTのデモを用いて左房の拍動運動をトレースできることを確認した。この画像からコンピューター解析にて左房内の血流パターンを描出できることを確認した。生理学的検査をもとに得られた結果の妥当性を検討中である。肺癌術前後のコンピューターによる左房流体解析実施については2018年8月自治医科大学臨床研究倫理審査で承認(臨A18-229)を受け、同年10月から4人の患者さんの術前術後の4DCTを作成し、解析を始めている。 (背景)左肺上葉切除後に心原性脳梗塞が起きやすいといわれる。正常な心機能で不整脈のない患者の肺葉切除術後に左房血栓症をきたすのは、肺静脈切断に伴う左房内の血流分布の変化により左房内の血流パターンが変化し、血流うっ滞時間が延長し血栓が生じてしまうのではないかと考えた。(対象と方法)左肺上葉切除術を行った患者の術前後に胸部の心拍同期型造影CT(128列)を行った。得られた画像から大阪大学基礎工学部において、一心拍中の左房の形状変化をトレースし、その形状変化をもとに左房内の血流パターンを解析した。 (結果)左房収縮前期には左房・左心耳から各肺静脈へ逆流し、僧帽弁が開放する左房収縮後期には各肺静脈から左室へ順行性に血流が流入した。僧帽弁が閉鎖する左室収縮時には左房内には背面方向からみて時計軸方向の緩徐な回転流が形成されていた。左房内の血流速度が最も早くなる左房収縮後期でも左肺静脈根部には血流のうっ滞する領域が見られ、左上葉切除後にはその領域が拡大することが示唆された。 (結語)4DCT撮影することにより左房の運動を可視化し、コンピューターを用いて左房内の血流パターンを解析することができた。左房内の血流は左肺静脈近傍でうっ滞する傾向があり、肺葉切除はこの血流パターンを助長させ、不整脈や左房内血栓を引き起こす危険性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は3Dプリンターから複製した左房のガラスモデルを作成し、血液を模索した粒子を含んだ液体を流して血流解析をする予定であったが、大阪大学と共同で血流をコンピューター解析することに成功したため、ガラスモデル作成費用・映像録画費用を省くことができた。一方、今年度からコンピューター血流解析の基データとなる左房の形態変化をトレースする作業を株式会社アールテックに委託するため、新たな費用が代わりに生じることになる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初は左房のCT画像から3Dコンピューターを用いて左房のガラス管モデルを作成し、粒子を含んだ液体中の粒子の動きを追跡することで左房内の流れを可視化する予定であったが、大阪大学基礎工学部と共同研究により、心拍同期型CT画像から直接血流パターンをコンピューターで解析することに成功した。 2018年秋に、当院での臨床研究倫理審査で承認を得、肺癌に対する左肺上葉切除4例に対し、術前後の4DCT検査を行った。これらのデータから左房の運動を描出し、手術前後の血流を解析する予定である。 今回、左房の動態解析を行った研究において、左肺静脈の分岐パターンが様々であることがわかった。そしてこの分岐パターンは左房内の血流に大きく影響するものと考え、臨床研究の対象症例を20例から50例に増やし、肺静脈の分岐型の違いによる血流パターンも検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は左房のCT画像から3Dコンピューターを用いて左房のガラス管モデルを作成し、粒子を含んだ液体中の粒子の動きを追跡することで左房内の流れを可視化する予定であったが、大阪大学基礎工学部と共同研究により、心拍同期型CT画像から左房の形態変化を一心拍単位で描出し、その形態変化を基に左房内の血流パターンをコンピューターで解析することに成功した。 2018年秋に、当院での臨床研究倫理審査で承認を得、肺癌に対する左肺上葉切除4例に対し、術前後の4DCT検査を行った。これらのデータから左房の形態変化を描出し、手術前後の血流を解析する予定である。 今回、左房の形態解析を行った研究において、左肺静脈の分岐パターンが様々であることがわかった。そしてこの分岐パターンは左房内の血流に大きく影響するものと考え、臨床研究の対象症例を20例から50例に増やし、肺静脈の分岐型の違いによる血流パターンも検討する予定である。このため今年度からコンピューター解析の基データとなる左房の形態変化をトレースする作業を株式会社アールテックに委託する予定である。
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