研究課題
我々はこれまで大腸癌をはじめとする癌の鋭敏な新規マーカー開発、分子標的治療の可能性を探り研究を進めてきた。とくに大腸癌では転移はリンパ節のほか、肝、肺に多く見られるが、現在は転移巣に対しても積極的治療が選択される。転移においても早期発見、早期治療は大腸癌患者の平均余命を向上させると考えら れている。しかし現状では転移を検出するための「転移マーカー」は存在しない。そのため一様に抗癌剤投与を施すのが現状である。このような事情から、転移 を予測可能な、あるいは早期に発見するために有効な「転移マーカー」の開発が今後の大腸癌治療の進歩をもたらすものと考えられる。我々はCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法を適用し大腸癌の転移有り・無しの症例サンプル間での比較解析を行い、転移特異的な遺伝子を特定することによる新たな診断マーカーの開発を着想した。本研究はCAGE法によって抽出した候補遺伝子群から、大腸がんの転移マーカーを特定することを主目的とする。癌部組織および採血検体を用いその遺伝子発現 を解析、転移症例に特異的な発現昂進または抑制を示す遺伝子のうち血中マーカー候補を選別する。また術後の患者の追跡により、採血検体で特定したマーカーのレベル変動による術後肺転移の予測も目指していく。以上、本研究では大腸癌の肺転移を予測できうるマーカーを取得を目指す。現状では評価できない転移リスク、また初期の転移を、診断可能にすることまでを目的とする。
3: やや遅れている
大腸がん転移を引き起こす原因遺伝子を突き止め、さらに大腸癌の転移マーカーを新たに開発することを目標とする。すでに患者から採取し保管してあるサンプルを用い、肺転移を起こした大腸がん原発巣の転移有り群と転移無し群の遺伝子の比較解析を行い、興味深い結果を得ている。しかし新型コロナウイルス感染拡大の状況下、計画進行に様々な側面で支障が生じ、この影響で研究工程に若干の遅れが生じた。
複数のマーカー候補遺伝子群について、患者の臨床データを解析、さらに候補遺伝子の絞り込みを行う。腫瘍部よりRNAを抽出し転移巣の解析を行うことによって大腸癌等の転移マーカー候補を選別し有効な転移マーカーを特定する計画である。
新型コロナウイルス感染拡大の状況下、予定していたアルバイトを雇わず、研究代表者らによって作業を行ったこと、一部の研究計画を次年度以降に繰り越したことから次年度使用分が発生した。これは次年度研究における試薬・器具などの購入、データ解析費用などに当てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 備考 (1件)
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