間質性肺炎合併肺癌の生物学的特性を検討するために、病理病期I期の間質性肺炎合併肺癌の切除症例を検討したところ、非合併肺癌と比較して、術後の再発率が有意に高いことを見出した。さらに、間質性肺炎合併肺癌の術後の再発部位を詳細に検討したところ、非合併肺癌と比較し、胸腔内再発、特に肺転移による再発が多く認められた。このことから、「間質性肺炎における肺の環境が、肺癌の肺転移巣の形成を促進させる」という仮説を立て研究を開始した。 C57BL/6マウスにブレオマイシンを経気道的に投与することで、ブレオマイシン誘導性IPモデルマウスを作成した。C57BL/6マウスの左肺に、同系マウス由来の 肺がん細胞株であるLewis lung carcinoma cell (LLC)を同所性移植させる肺がんの同所性肺移植モデルを確立した。ブレオマイシン誘導性間質性肺炎マウスモデルにLLCを左肺に同所性肺移植して形成された腫瘍を、コントロールとしてPBSを経気道的に投与したマウスに形成 された腫瘍と比較したところ、腫瘍の大きさに有意差は認められなかったものの、コントロールマウスでは全く認められなかった対側肺転移が認められるようになった。そこで、抗線維化薬投与により間質性肺炎を制御することで、肺転移を抑制することができるのかを検証した。肺がんの同所性肺移植モデルにブレオマイシンで間質性肺炎惹起させ、間質性肺炎に対する治療薬であるピルフェニドンを投与し、間質性肺炎を制御したところ、肺がんの対側肺転移が有意に抑制された。 次に、LLCを尾静注し、マウス肺転移モデルを作成した。ブレオマイシン誘導性間質性肺炎マウスモデルにLLCを尾静注したところ、肺転移巣の数はコントロールマウスと比較し、有意に多くなった。抗線維化薬投与により間質性肺炎を制御することで、尾静注による肺転移が有意に抑制された。
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