研究課題
2016年には全国の肺癌罹患数は13万人以上となり、肺癌による死亡者数は約8万人に達した。肺癌は診断されるとそのうち半数以上が死に至る生命予後が極めて悪い難治性癌であり、肺癌を予防することが重要な医学的課題となっている。このため、本研究では、喀痰に含まれる気管支上皮中に発現する発癌性化学物質の代謝に係る解毒酵素を網羅的に解析する。さらに、癌幹細胞マーカーなどから肺癌発生のメカニズムを検討し、網羅的に解析した発癌物質代謝酵素の肺癌感受性を検出し評価することとした。2018年度には、下記の研究をおこなっている。1)肺癌切除肺約100例を対象として喫煙量や切除までの禁煙期間、所在地などの「環境要因・生活習慣要因」に関する臨床病理学的情報の集積を行なっている。(約80%の作業が終了している)2) 対象例約100例の切除肺からパラフィン包埋切片を作製し、HE(hematoxylin and eosin stain)染色により組織学的診断を行う。(約90%の作業が終了している)3) 切除肺切片の肺癌の癌幹細胞マーカー免疫組織化学染色(aldehyde dehydrogenase-1:ALDH1、CD133、CD44、癌抑制遺伝子:p53) を施行する。(染色条件判定のための予備実験中)
2: おおむね順調に進展している
1)肺癌切除肺約100例を対象として喫煙量や切除までの禁煙期間、所在地などの「環境要因・生活習慣要因」に関する臨床病理学的情報の集積を行なっている。予後調査、や合併疾患の調査が残っているが、対象症例に対する情報集積は約80%の作業が終了している。2) 対象例約100例の切除肺からパラフィン包埋切片を作製し、HE(hematoxylin and eosin stain)染色により組織学的診断を行う。対象症例全てのスライド作成と病理診断の確定作業の約90%の作業が終了している。3) 切除肺切片の肺癌の癌幹細胞マーカー免疫組織化学染色(aldehyde dehydrogenase-1:ALDH1、CD133、CD44、癌抑制遺伝子:p53) を施行する。1次抗体の濃度、オートクレーブの有無などでの染色条件判定のための予備実験中である。
2018年度の研究が概ね終了したので次の研究方針を遂行する予定としている。1)肺癌切除肺約100例を対象として喫煙量や切除までの禁煙期間、所在地などの「環境要因・生活習慣要因」に関する臨床病理学的情報の集積の完遂。2) 対象例約100例の切除肺からパラフィン包埋切片を作製し、HE(hematoxylin and eosin stain)染色により組織学的診断を行う。対象症例全てのスライド作成と病理診断の確定作業の完遂。3) 対象例約100例の切除肺切片の肺癌の癌幹細胞マーカー免疫組織化学染色(aldehyde dehydrogenase-1:ALDH1、CD133、CD44、癌抑制遺伝子:p53) の施行を目指す。さらに、肺癌における幹細胞マーカーの意義を明らかにする。4) 対象例約100例の切除肺切片の気管支上皮の発癌物質代謝酵素による免疫組織化学染色(第I相発癌物質代謝酵素: CYP family、第II相発癌物質代謝酵素: Acetyltransferases・Glutathione S-Transferases・UDP Glycosyltransferases、第III相発癌物質代謝酵素: P-Glycoprotein family・Metallothioneins)の予備実験を施行する。
2018年度から2019年度に科学研究費が繰り越されたのは以下の理由による。1)肺癌切除肺約100例を対象として喫煙量や切除までの禁煙期間、所在地などの「環境要因・生活習慣要因」に関する臨床病理学的情報の集積に時間を要したこと。2)対象例約100例の切除肺からパラフィン包埋切片を作製し、HE(hematoxylin and eosin stain)染色により組織学的診断を行うのに時間を要したこと。上記のため、肺癌の癌幹細胞マーカー免疫組織化学染色の開始が遅れ、2018年度の科学研究費の使用が後半に移動した。更に、癌幹細胞マーカー免疫組織化学染色の判定作業にはバーチャルスライドという新手法取り入れたため、2019年度にはバーチャルスライドのための数十万円の追加研究費が必要となり、癌幹細胞マーカー免疫組織化学染色とバーチャルスライド作製に2018年度の科学研究費を使用する。
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日呼外会誌
巻: 32 ページ: 731-735