最終年度(2020年度)当初は新型コロナウイルスの影響で思うような研究活動は行うことができなかった。急性高血糖時、静脈麻酔薬の一つであるプロポフォールは吸入麻酔薬であるデスフルランと比べて脳血管のアセチルコリンへの反応性が維持されることが本研究過程で判明していたので、次はプロポフォールと同じく吸入麻酔薬のセボフルランを比較してみたが予想通りデスフルランと比較した場合と同様の結果であった。セボフルランと、デスフルランは全身麻酔薬としての化学的特性が類似しているので当然の結果ともいえる。 研究期間全体を通して判明したことは、 ①デスフルラン、セボフルランはともに0.5MAC(Minimum alveolar concentration;肺胞最小濃度のことで、吸入麻酔薬の投与量の尺度)と1MACの投与条件下では動脈血二酸化炭素分圧の変化に対する脳血管の反応性は同等であった。 ②急性高糖時、脳血管のアセチルコリン(正常では脳血管内皮に作用し血管拡張作用を有する)に対する反応性はプロポフォールがデスフルラン、セボフルランよりも維持されていた。 上記、2点となる。当初の研究計画ではプロポフォールをプロトコールに入れていなかったが、臨床の立場から考えると非常に重要だと考えられ、デスフルラン、セボフルラン2つの麻酔薬にプロポフォールを加えた。このことから、本研究成果はより大きな意味を持つことになったと考える。
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