研究課題/領域番号 |
18K08814
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50252391)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心臓 / マイクロダイアリシス / ミオグロビン / TRPCチャネル / 吸入麻酔薬 |
研究実績の概要 |
我々は吸入麻酔薬が心保護効果を有することを心臓マイクロダイアリシス法により検証してきた。このメカニズムとして細胞障害の重要な因子の一つであるCa2+動態に着目し、虚血時に生じる小胞体Ca2+の低下をトリガーとして生じる電位依存ではないCa2+チャネルであるTransient receptor potential canonical (TRPC)が、虚血再灌流時に心筋細胞膜表面に発現し、そのチャネルを介して細胞内Ca2+流入を引き起こすことをin vitro実験で突き止めた。TRPCチャネルは種々の物理化学刺激によって活性化される広範なCa2+流入チャネル群(TRP チャネル遺伝子スーパーファミリー)の一種であり、特にTRPC は心筋細胞が虚血に陥った際に細胞内Ca2+が減少し、小胞体内のCa2+低下をきっかけに機能発現するユニークな性質を持つ。そこで、今回は心臓マイクロダイアリシス法を用い、in vivo 心筋間質レベルで虚血・再灌流傷害関連物質応答を評価することを試みた。TRPCチャネルブロッカーの存在下で冠動脈閉塞開放を行い、その際の心筋透析液における逸脱タンパク濃度応答を測定した。細胞内Ca2+動態に影響するL型カルシウムチャネル阻害薬 (verapamil)、NCX阻害薬(KB-R7943)、SRからのCa2+放出阻害(カフェイン、TMB-8)リアノジン受容体阻害薬(テトラカイン)、SERCA阻害薬(タプシカルギン)の存在の有無で、心筋透析液逸脱タンパク質濃度応答を測定した。現在は透析液逸脱タンパク質濃度測定に加えて、アポトーシス障害の指標としてのチトクロームC、炎症の指標としてのIL6, IL10, TNFαを測定できるよう、透析や測定の条件を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目は虚血再灌流による心筋細胞傷害の指標として、IL6、IL10、TNFαが測定できないかと考え、灌流液速度や透析膜の変更、透析液吸引システムをマイクロダイアリシスに応用するなど、多くの工夫を凝らして測定を試みているところである。その結果、IL6の虚血再灌流時の上昇を捉えることに成功した。一方、IL10,TNFαについては測定できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は虚血再灌流によるオンコーシスの指標としてのミオグロビン濃度応答と炎症反応の指標としてのIL6が至適マーカーとなりうることが判明した。今後は個体差の確認を行い、さらに灌流液速度や透析膜の変更、透析液吸引システムをマイクロダイアリシスに応用するなど、多くの工夫を凝らしてより確度の高いデータを測定できるようにする予定である。これらのマーカーの同時測定が可能となれば、吸入麻酔薬単独あるいはL型カルシウムチャネル阻害薬 (verapamil)、NCX阻害薬(KB-R7943)、SRからのCa2+放出阻害(カフェイン、TMB-8)リアノジン受容体阻害薬(テトラカイン)、SERCA阻害薬(タプシカルギン)との併用下での心筋透析液ミオグロビン・IL6濃度応答を測定し、その影響を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数の調整がうまくできず、次年度に繰り越した。次年度の物品費として使用する予定である。
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