研究課題
研究代表者の研究グループは、早くから吸入麻酔薬の心筋保護作用に注目し、その経路を明らかにしてきた。しかしながら、そのメカニズムの全容は明らかではない。特に、吸入麻酔薬イソフルランを前投与することで得られる心筋保護作用はAnesthetic Preconditioning(APC)として知られており、イソフルランを1.0MAC (minimum alveolar concentration)・30分吸入させることでその後に起こる虚血再灌流障害に対して心筋保護作用を発現する。近年、自食作用であるオートファジーが心筋保護作用に関与し、重要な役割を演じていることが明らかになってきた。また、ミトコンドリア機能の調節が心筋保護に関与する可能性があると報告されたが、イソフルランの心筋保護作用に対し、オートファジーとミトコンドリアの機能調節についての関連性は明らかになっていない。最終年度は、プレコンディショニング作用がオートファジー及びミトコンドリアダイナミクスを含むミトコンドリア機能に与える影響について調べた。摘出心をランゲンドルフ酵素法を用い得られた遊離心室筋細に対し、1 時間低酸素状況に暴露することで心室筋細胞に虚血状態をつくりだす。その後通常の培養状態に戻すことで再潅流状態とする。ミトコンドリア染色色素(MitoTracker)、光褪色後蛍光回復法(FRAP assay)を用いて各群のミトコンドリアダイナミクス(ミトコンドリアの分裂と融合)を明らかにした結果、吸入麻酔薬はミトコンドリア融合に作用し心筋保護作用を発揮することが示唆された。さらにcalsein-AM試薬を用いて細胞を蛍光ラベルし、ミトコンドリアmPTP開閉を観察した。吸入麻酔薬はmPTPを閉鎖し、心筋保護作用をあらわすことが明らかになった。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
BMC Anesthesiol
巻: 20 ページ: 143-143
10.1186/s12871-020-01061-3
J Med Invest
巻: 67 ページ: 139-144
10.2152/jmi.67.139