研究課題/領域番号 |
18K08819
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
長谷川 麻衣子 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (20516637)
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研究分担者 |
松永 明 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 准教授 (70284883)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 周術期免疫活性 / 術後合併症 / 術後予後 / オピオイド |
研究実績の概要 |
がん患者や脊椎手術を受けた患者において、免疫指標である好中球/リンパ球比の周術期変化とオピオイド使用量の関連、手術部位感染や術後肺炎など術後合併症と予後への影響について後ろ向きに検証した。また、脊椎手術、消化管手術におけるCD4/CD8 T細胞数の術中変化についても前向きに測定し、麻酔・鎮痛薬の周術期免疫抑制への影響を検討した。 食道がん患者では、術後肺炎の発症と術後2年以内のがん再発に相関が見られ、術後肺炎の発症は、術前好中球/リンパ球比、アルブミン値と関連することが明らかになった。オピオイドは免疫抑制作用を有することが報告されているが、その使用量は術後合併症や予後と関連しなかった(Open J Anesth 2020 10:101-112.)。また脊椎手術においては、術中免疫指標の変化と手術部位感染との関連は認められず、オピオイド使用量との関連もみられなかった(JA Clin Rep. 2020 6:19.)。術後7日目のCRP値のみが術後感染を示唆する危険因子として同定された。脊椎手術、消化管手術におけるCD4/CD8比の推移と術後合併症の関連について解析中である。 近年、オピオイドの術前使用と術後合併症や在院日数との関連が示唆されているが、術中のオピオイド使用と免疫指標変化との直接の因果関係については明らかにされていなかった。本研究では、術中の一時的なオピオイド使用は術後予後との関連が見られなかった。オピオイドは慢性使用した場合のみ、免疫系に影響を及ぼす可能性が示唆された。術後鎮痛としてオピオイド使用、がんの疼痛緩和としてのオピオイド使用が免疫系に及ぼす影響については、臨床上のさらなる検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初術後痛と術中免疫活性との関連を検証する予定であった。整形外科手術において、免疫活性指標の変化と術後痛(安静時痛・体動時痛)の関連を後ろ向きに検証したが、有意な関連はみられなかった。そこで免疫活性指標と手術部位感染、がんの再発といった術後予後との関連の検証に焦点をあてた。周術期にはさまざまな因子が短期間で変化し影響するため、直接的な関連を臨床的に評価するのは困難であるが、免疫活性指標として好中球数、リンパ球数しか評価しておらず、機能的な変化については検証をおこなっていないため、次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
周術期の免疫変化が術後痛に及ぼす影響については白血球数や好中球/リンパ球比のみでなく、マクロファージの影響も検証する予定である。単球数よりもむしろ機能変化に着目する。マクロファージには炎症型(M1)と抗炎症・創傷治癒型(M2)があり、M1/M2比、あるいはM1からM2へのシフトが術後痛や術後合併症と関連すると仮説を立て、前向き臨床研究により検証する。 また、術後痛モデルマウスにおけるオピオイドの炎症部位への作用やマクロファージ機能への影響を評価し、痛みとの相関を検証する。術後のオピオイド一時的投与と慢性投与のマクロファージ機能への影響を細胞実験および動物実験により比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験における解析の軽微な遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。ひきつづき計画通り実施する予定である。
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