側弯症手術における周術期の免疫活性変化と手術部位感染(SSI)の関連について検証した。SSIを発症した群では術前CRPが上昇していた。術後の好中球/リンパ球比は、発症しなかった群と比較して差がなかった。最もSSIと関連していたのは術後7日目のCRP値であった。術後にフェンタニルを使用した期間は、SSI発生群で有意に延長していたが、感染による術後痛の遷延化が影響している可能性がある。本研究は後ろ向き研究であり、オピオイドの免疫抑制との因果関係は不明である。 さらに食道癌手術におけるオピオイド使用と術後予後の関連について検証した。術中のオピオイド使用量(フェンタニル換算)と手術部位感染、術後肺炎、縫合不全、転移、2年生存率の関連は見られなかった。術前後の化学療法、放射線療法実施の影響により、手術侵襲よりむしろ術前から免疫抑制が生じている可能性が示唆された。周術期オピオイド使用と術後免疫抑制に関連する予後の直接的関連はみられなかった。 さらに帝王切開術における術後急性痛と産後うつの関連について検証した。術後せん妄や術後うつは手術侵襲による脳炎症の影響が示唆されており、術後痛との関連を検証した。帝王切開術後に産後うつを発症した群では術後急性期(5日目より)うつ病指標が有意に上昇しており、術後痛が関連因子として同定された。術後急性痛と術後精神活動の評価を実施することにより、早期に長期的認知障害やうつを予防することが重要であることが示唆された。脳炎症や免疫活性と術後精神活動の関連については今後の研究課題である。
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