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2018 年度 実施状況報告書

海馬における神経細胞の新生低下に注目した慢性疼痛の発症機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K08822
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

祖父江 和哉  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90264738)

研究分担者 太田 晴子  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (90534751)
草間 宣好  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60336691)
大澤 匡弘  名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (80369173)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード慢性疼痛 / 海馬 / 神経細胞の新生低下
研究実績の概要

本研究の目的である、神経障害性疼痛時の海馬神経新生低下のメカニズムを明らかにするため、まず、神経障害性疼痛時に、神経幹細胞から成熟ニューロンに至るまでのどの過程が影響を受けるのかについて、免疫組織化学法により検討した。神経障害性疼痛モデルには、総腓骨神経および脛骨神経を結紮切除して作製するSpared Nerve Injury (SNI) モデルマウスを用いた。海馬における神経新生の場である、歯状回顆粒細胞下帯(SGZ)において、神経幹細胞マーカーであるNestinとGFAPの共陽性細胞数について検討したところ、SNIモデルマウスと擬似手術群の間で、細胞数に有意な差は見られなかった。このことから、神経障害性疼痛時に起こる神経回路の活性変化により、神経幹細胞数は影響を受けないことが示唆された。
次に、灌流固定の1時間前に5-bromo-2'-deoxyuridine(BrdU)を投与することで増殖細胞を標識し、神経前駆細胞のマーカーであるTbr2とBrdUとの共陽性細胞数の検討を行ったところ、SNI群において、細胞数の有意な減少が見られた。また、灌流固定の1週間前にBrdUを投与することで、新生ニューロンをBrdUで標識し、新生ニューロンのマーカーであるDCXとBrdUとの共陽性細胞数の検討を行ったところ、SNI群で細胞数の有意な減少が見られた。これらの結果より、神経障害性疼痛による海馬歯状回の神経新生の低下は、SGZの神経前駆細胞数が減少することで生じることが示唆された。
また、SGZにおける神経前駆細胞数の低下を引き起こす神経回路を明らかにするために用いる遺伝子改変マウスの作製を行った。Fos-tTAマウスに、アデノ随伴ウイルスベクターを用いてtetO-Cre遺伝子およびCre-DREADD遺伝子を導入した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請書で計画した内容に沿って問題なく進行しており、実験計画は順調であると言える。結果に関しても、神経新生が低下する原因が、SGZにおける神経前駆細胞数の減少にあることをすでに見出しており、滞りなく計画を進行できている。

今後の研究の推進方策

SGZにおける神経前駆細胞数の低下が、体性感覚を伝える神経回路、または負の情動を生成する神経回路のいずれか、もしくは両者の影響によるものかを検討する。まず、前年度に作製した「tetO-Cre遺伝子」+「Cre-hM4Di遺伝子」を導入したFos-tTAマウスに、ドキシサイクリン(Dox)含有餌を与え、神経障害直前にDox非含有餌に切り替える。神経障害を行った翌日よりDox含有餌に切り替え、遺伝子発現を抑制することで、痛み刺激で活性化した神経細胞のみにDREADDを発現させる。疼痛モデル作製後、CNOを体性感覚経路の起始核である外側視床、もしくは情動経路の起始核である外側腕傍核へ局所投与することで、各領域にある痛みにより活性化した神経回路内の細胞を抑制する。その際のSGZにおける神経前駆細胞数、および痛み閾値や不安行動の変化について解析する。
上記いずれかの神経回路の抑制で、SGZの神経前駆細胞数の低下の抑制が起こり、疼痛閾値の低下の抑制が起こった場合、関連する神経回路と同定できる。
次に、痛みで活性化する神経回路を個別に活性化した際に、SGZの神経前駆細胞数に与える影響について検討を行う。回路を個別に活性化させるために、前年度に作製した「tetO-Cre遺伝子」+「Cre-hM3Dq遺伝子」を導入したFos-tTAマウスを用いて、単発の痛み刺激を加えた後、外側視床、または外側腕傍核へCNOを14日間持続投与する。こうして体性感覚経路、および情動経路を個別、または同時に持続的に活性化した際にSGZの神経前駆細胞数に与える影響、および痛み閾値や不安行動の変化を解析する。
上記いずれかの神経回路の活性化で、SGZの神経前駆細胞数の低下が起こり、疼痛関連閾値の低下が起こった場合、関連する神経回路と同定できる。

次年度使用額が生じた理由

(理由)引き続き、遺伝子改変モデルマウスへのドキシサイクリン含有餌の投与のオンオフで遺伝子発現を調節し、SGZにおける神経前駆細胞数の低下の影響の検討を行うため、次年度使用額が生じた。
(使用計画)遺伝子導入マウスの飼育や、ドキシサイクリン(Dox)含有餌、Dox非含有餌などの購入費用に充てる。また、遺伝子発現の確認や、疼痛モデルの組織の確認、神経細胞の確認などのための試薬、プラスチック器具などの消耗品の購入費用も必要である。

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公開日: 2019-12-27  

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