昨年に引き続き、Conditioned Pain Modulation(CPM)、Thermal Pain Illusion(TPI)および患者背景等を含めた収集データの多変量解析結果から、術後急性痛および遷延性術後痛発症危険因子を解明し、慢性疼痛の発症を予防することを目的として、以下のデータ収集を行った。 口腔外科領域の予定手術患者を対象に、周術期(術前、術直後、術数か月後)にCPMとTPIを評価した。CPM評価のためのテスト刺激として、利き手前腕 (橈側手根屈筋)に一定の圧力で加圧可能な自作圧痛覚測定システム(プローブ面積:1cm2,圧力3 N/s (= 30kPa/s ))(AIKOHエンジニアリング,日本)を用いて圧刺激(30 kPa/s)を与え、条件刺激前、 条件刺激中、条件刺激終了10分後の3回、圧痛覚閾値(pressure pain threshold: PPT)を測定した。CPM誘発のための条件刺激は、Peltier素子を電気的に制御する特注型冷温刺激装置(VICS、東京、日本)を用いて、各個人における主観的痛み(visual analogue scale: VAS)が70/100mmとなる強度で利き手反対側前腕に冷温刺激を与えた。条件刺激中と条件刺激前の PPTの比からCPM効果を算出した。TPIは、特注型冷温刺激装置を用いて、各被験者においてVAS=70/100mmとなる冷刺激温度および温刺激温度の繰り返し刺激に対する錯感覚の有無を評価した。 さらに、患者背景(年齢、性別、性周期、慢性疼痛の有無およびそのVAS値と鎮痛剤使用量、疼痛罹患歴、抑うつ傾向、疼痛破局的思考尺度等)、術後急性痛発症の有無およびその主観的痛み強度(visual analogue scale: VAS)と罹患期間、術後急性痛発症時の鎮痛剤使用量について情報収集した。 データを多変量解析した結果、術前のCPMとPain Catastrophizing Scale(PCS)が術後痛を予測することが示唆された。
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