研究課題/領域番号 |
18K08827
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研究機関 | 千葉科学大学 |
研究代表者 |
福永 優子 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (80254522)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グルタミン酸受容体 / プレコンディショニング / 神経保護作用 / リン酸化CREB / 虚血耐性 |
研究実績の概要 |
海馬や大脳皮質に、細胞死を誘導しない程度の刺激(プレコンディショニング処置)を負荷すると、24~48時間後に負荷する虚血による細胞死を抑制する「虚血耐性」を誘導することが知られている。これはプレコンディショニングによって内在性の神経保護作用が促進された結果と考えられる。一方、プレコンディショニング1時間後では、逆に神経保護作用の抑制効果が認められることを見出した。本申請研究では、この神経保護作用の抑制効果の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 実験には海馬スライス培養細胞を用いた。プレコンディショニング処置1時間後に見られる神経保護作用抑制効果に関わるNMDA受容体のサブタイプを明らかにするために、プレコンディショニング時にPEAQX(NR2Aアンタゴニスト)またはRo256981(選択的NR2Bアンタゴニスト)を処置した。神経保護作用は、シナプスNMDA受容体活性化によるリン酸化CREB量増加を指標とした。プレコンディショニングによる神経保護作用抑制効果に対し、検討したアンタゴニストの濃度では、PEAQXは影響せず、Ro256981は抑制効果を示したため、シナプス外NMDA受容体を介している可能性が示唆されたが、この効果には有意差が認められず、例数を増やす必要があると考えられた。また、プレコンディショニング効果およびシナプスNMDA受容体処置によるリン酸化CREB量の増加効果が安定しないため、今後の実験のために、海馬スライスの培養日数の検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経保護経路の活性化をリン酸化CREB量を指標に検討したが、シナプスNMDA受容体を活性化するためのGABAA受容体アンタゴニストの処置によるリン酸化CREB量の増加が不安定であり、またプレコンディショニングの効果も不安定であった。そのため関与するNMDA受容体のサブタイプを決めるのに予定より多くの時間を要してしまった。またCOVID-19の感染拡大による影響のため、その他の業務が多忙となり、当初予定の実験を遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
例数を増やし、神経保護効果の抑制作用に関わるNMDA受容体サブタイプを決める。さらに薬理学的手法を用いて、プレコンディショニングとして、シナプスNMDA受容体刺激またはシナプス外NMDA受容体刺激を行い、刺激1時間後の神経保護作用抑制効果と刺激24または48時間後の神経保護作用の有無を検討し、神経保護作用抑制効果に関わるNMDA受容体の局在場所を明らかにする。また、神経保護作用抑制効果の細胞内分子メカニズムを明らかにするために、プレコンディショニングによって変動する分子を同定する。またこれら経路の阻害剤がある場合は、阻害剤の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加費、旅費が不要であった。ティッシュチョッパーの動作がやや不安定であるが、修理に出すタイミングがなかったため。またCOVID-19の感染拡大による影響で、その他の業務が多忙となり、当初予定の実験を遂行できなかった。 翌年度に、遂行できなかった実験を実施する。また、想定より実験例数を増やす必要があるため、当初より培養に多くの費用が必要になる。次年度使用になった予算をこれらに充当する。また、海馬スライスの作成に用いるティッシュチョッパーの修理を行う。
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