研究実績の概要 |
【目的】COVID-19呼吸不全患者では、経鼻高流量酸素療法(HFNC)の適応が拡まった。COVID-19患者へのHFNCの有効性を、ROX index (ROX=[SpO2/FiO2]/呼吸回数[/分])に基づき評価する。 【方法】単施設、非介入後ろ向き観察研究。2020年1月1日~2021年12月31日に、HFNCを導入した20歳以上のCOVID-19患者を抽出し、基準統計量を中央値(四分位範囲)あるいは平均±標準偏差で示した。HFNC導入前後、及び腹臥位療法施行患者においては施行前後のROX indexを算出し、施行1時間前、1,2,4,6時間後の変化をOne way ANOVA repeated measuresにより解析した。 【結果】対象36症例は、年齢64.5(54.5-77.5)歳、身長165(153.5-170)cm、COVID-19罹患日数10(8-13)日、体重70(58.8-76)kg、CRP 7.87(3.655-9.5775) mg/L、Dダイマー2.95(1.4-82.1)ug/mL、入院日数2(1-5.25)日、男/女 25/11名、HFNC施行前FIO2 0.4(0.36-0.48)。HFNC導入前の心拍数85.5±23.1回/分、ROX index 10.9±4.80。HFNC導入後SpO2/FIO2が有意に低下したが、その他のパラメーターに有意差は見られなかった。腹臥位管理を行った9例でも、導入前後でいずれのパラメーターにも有意差は見られなかった。 【考察】COVID-19による呼吸不全患者に対するHFNC療法の効果は、臨床医の印象程有効でない可能性が示唆された。 【総括】シミュレーターを用いた研究では、HFNCの換気効果が示されたが、COVID-19患者から得られたデータでは、その有効性は明らかではなく、更なる臨床での検証が必要と考えられた。
|