研究課題
婦人科良性疾患に対する腹腔鏡手術を受ける患者において、急性術中・術後痛および術後3か月以上持続する遷延性術後痛に影響する遺伝子多型を網羅的に探索する目的で本研究を開始した。2020年までに333例の婦人科腹腔鏡下手術例における周術期疼痛データとゲノムDNA精製を完了した。年齢21~69(平均39)歳、術中レミフェンタニル投与速度0.303+-0.068 μg/kg/分、術後12時間のフェンタニル必要量は9.73+-4.51 μg/kgで、平均レミフェンタニル投与速度は0.022~0.713 mcrg/kg/分、術後12時間フェンタニル必要量は3.92~25.4 mcrg/kgと大きな個人差を認めた。術後の平均疼痛スコア(0=無痛,10=最大の痛み)は1.82で0~6までの大きな個人差を認めた。術後平均疼痛スコアと術後12時間フェンタニル必要量との間には正の相関が認められた(p < 0.0001)。術後3か月まで疼痛が持続していた患者は12例であった。ゲノムワイド遺伝子多型解析の結果、術後遷延性疼痛を認めた症例に特有の遺伝子多型は見出せず、最初の6例を多施設共同研究に編入した場合も慢性痛症例に有意な遺伝子多型は見出せなかった(Mol Pain. 2021; 17: 1744806921999924.)。しかし、追加の個別遺伝子解析でTransient Receptor Potential Canonical 3 (TRPC3)の遺伝子の一塩基多型が術後遷延痛も含む慢性痛の発生に関与する可能性が示された(Int J Mol Sci. 2023;24:1028)。婦人科症例の急性痛表現型に関しては、Astrotactin 2 (ASTN2)の遺伝子上の2つの一塩基多型が婦人科腹腔鏡手術患者の疼痛関連表現型に及ぼす影響が見出され(2023年日本麻酔科学会第70回学術集会発表)、更にμ-opioid受容体のOPRM1遺伝子多型(rs1799971)が術中のレミフェンタニル平均投与速度に有意な影響を与える事が見出され発表準備中である。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (4件)
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