研究課題/領域番号 |
18K08830
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
伊藤 健二 東海大学, 医学部, 准教授 (10317779)
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研究分担者 |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 脊髄 / グルタミン酸 / Dセリン / マイクロダイアリシス |
研究実績の概要 |
神経障害性疼痛は発症機序が不明なため、根本的な治療法が無く臨床上重大な問題となっている。末梢神経を損傷させた神経障害性疼痛 の脊髄においてアストロサイトは細胞体および突起を肥大化させ活性化することが知られている。また、神経障害に伴うアロディニアや痛覚過敏などの発症に N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体活性化が深く関与しているが、そのNMDA活性化メカニズムは不明である。本研究は活性化アストロサイ トによる脊髄後角ニューロン変調メカニズムを明らかにするために、Dセリンの神経障害性疼痛における役割解明を基軸に据え、アストロサイトとの相互関係を明らかにすることを目的とした。本年度は、昨年度構築した脊髄における神経伝達物質の遊離に関してin vivoマイクロダイアリシス法を用い、持続性疼痛モデルラット脊髄内興奮性アミノ酸遊離量変化について検討した。すなわち、イソフルラン麻酔下でマイクロダイアリシスプローブを脊髄内に挿入し、in vivoマイクロダイアリシス法によりシナプス間隙液を回収し電気化学検出器HPLC法によりホルマリン刺激によるD-セリン、グルタミン酸などの遊離量について解析した。その結果、ホルマリン刺激後の第1相、第2相において、Dセリン、グルタミン酸分泌量がいずれも上昇すること、Dセリン遊離量に有意な変化がない時期にはグルタミン酸遊離量が増加する、グルタミン酸遊離量に有意な変化がない時期にはDセリン遊離量が増加する、といったDセリン、グルタミン酸遊離量が補完的に増加するが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
末梢神経を損傷させた神経障害性疼痛の脊髄においてアストロサイトは細胞体および突起を肥大化させ活性化することが知られている。 本年度は、脊髄内での神経伝達物質の遊離をマイクロダイアリシス法で検出するシステムを構築した。本システムを用いてマイクロダイアリシス法による灌流液中の興奮性アミン酸分析を行った結果、ホルマリン刺激後に第1相、第2相いずれもD-セリン、グルタミン酸分泌量がいずれも補完的に上昇することが明らかとなった。すなわち、脊髄内の神経伝達物質を解析するシステムにより痛み刺激により疼痛伝達物質(グルタミン酸、Dセリン)変化量を世界に先駆けて定量的に解析した。以上の理由より、当初の実施計画におおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
絞扼性神経損傷(chronic construction injury: CCI)モデルを作成し熱刺激による逃避行動、von Frey試験、重心比重試験により疼痛関連行動を観察し、マイクロダイアリシス法により、神経障害性疼痛によるD-セリン分泌量、グルタミン酸分泌量など について解析する。また、Dセリン代謝関連酵素阻害剤などにより神経障害性疼痛に対して抑制効果が得られるかについて検討する。具体的には、脊髄後角におけるアストロサイト、Srr,DAO, NMDA受容体発現量の変化を免疫組織化学的、In situ hybridization(ISH)法で定性解析するとともに、脊髄後角の組織における各種タンパク質、遺伝子発現を定量解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に神経障害性疼痛モデルによるD-セリン遊離量、グルタミン酸遊離量について解析する予定であったが、計画を変更しホルマリン慢性疼痛モデルを使用 したため、未使用額が生じた。2020年度はホルマリン慢性疼痛モデルとともに神経障害性疼痛モデルを用いて検討する予定である。
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