研究課題/領域番号 |
18K08832
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
須永 宏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (80317966)
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研究分担者 |
山川 健太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (80570192)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超短時間作用型非脱分極性筋弛緩薬 / 新規化合物 / 合成 / 開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、全身麻酔の簡便性を高め、周術期管理の安全性向上を目標として、超短時間作用型非脱分極性筋弛緩薬の開発を目指すものである。具体的には、新規化合物を合成し、臨床において、作用の発現が速やかで、効果の制御が容易であり、拮抗薬なしに急速に回復し、蓄積作用がなく、有害作用がないことが期待できるものを選出すべく、小動物において基礎的検証を行うことである。 本研究においては、新規非脱分極性筋弛緩薬JH-NMBA(3種)を合成し、「JH-NMBAは有害作用を呈することなく超短時間作用性の筋弛緩効果を示す」という仮説を立て、その検証のため、評価に適した各種動物モデルを用いて基礎的研究を行う。具体的には、JH-NMBAが、高力価・超短時間作用性で、気管支収縮・循環抑制・ヒスタミン遊離などの有害作用がないかを検証する。本研究の結果をもとに大動物を用いた前臨床試験・毒性 試験へと展開する化合物を決定する。 これまでに行った研究から、JH-NMBAの比較対象となるロクロニウムには中枢神経に影響を与える可能性があることが示唆された。これは、筋弛緩薬の主作用である神経筋接合部の刺激伝達抑制作用から派生した間接的な効果によるものではなく、脳実質へ到達し、神経刺激伝達に直接影響を及ぼした結果であることが推察された。 本研究で検証する予定であったJH001~JH003も化学構造上の特徴から同様の作用をもつことが疑われたため、そのような有害作用を持たない化合物を開発する必要があり、化学構造の再検討を行った。中枢神経に到達する可能性を低くするためJH006~JH008を考案し、研究を進める予定であったが、持続時間の短縮、高力価の保持という点においてJH001~JH003よりも効果が劣ることが予測され、新たにJH009~JH011の化学構造を考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規化合物化学構造の再検討: 現在臨床で頻用されている非脱分極性筋弛緩薬であるロクロニウムは、新規非脱分極性筋弛緩薬JHNMBAの比較対象となる薬剤であるが、これまでに行った研究から、脳実質に到達し、直接作用により中枢神経に影響を与える可能性があることが示唆された。 本研究で検証する予定であったJH001~JH003(及びJH004~JH005)は化学構造上の特徴から同様の作用をもつことが疑われ、その可能性を低くするためにJH006~JH008を考案し、研究を進める予定であった。しかし、持続時間の短縮、高力価の保持という点においてJH001~JH003よりも効果が劣ることが予測され、本研究の目標である「全身麻酔の簡便性を高め、周術期管理の安全性を向上する」には至らないと考えた。 そこで、JH001~JH003と同等に持続時間が短く、力価も高いことが期待でき、JH006~JH008のように中枢神経に影響を与えないことが予想される化合物JH009~JH011の化学構造を考案した。
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今後の研究の推進方策 |
新規化合物の合成: 新たに考案した新規非脱分極性筋弛緩薬JH-NMBA(JH009~JH011)を合成する。 新規化合物の基礎的検証: 計画どおり、ラットを用いた薬力学的研究を行った後、気管支平滑筋収縮作用、循環器系への影響およびヒスタミン遊離作用の検証を実施する。 これらの結果をもとに、JH-NMBA(JH009~JH011)のうち、力価が高く、作用発現・持続・回復時間が速く、有害作用が少ないものを、大動物を用いた前臨床試験・毒性試験へと展開する化合物として選出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、合成し、検証する予定であったJH006~JH008は、新たに明らかになった筋弛緩薬の有害作用である中枢神経直接作用をもたないことが期待できたが、持続時間の短縮、高力価の保持という点においてJH001~JH003よりも効果が劣ることが予測されたため、新たにJH009~JH011を考案した。 次年度、これらの化合物を合成し、小動物を用いて基礎的検証を行う予定である。
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